2023.01.13 【放送/機器総合特集】池上通信機 田部伸一営業本部副本部長
田部 副本部長
ロボットアームの活用提案などニーズに応える製品開発
昨年は放送局などの大きなサブシステムの設備更新の引き合いが活発化し、新規案件の受注は堅調に進んだ。これからは放送局以外の競技場、学校関係など、比較的小規模なシステムの更新需要が残っており、積極的に応えていきたい。
一方で、半導体不足により部材の調達が難しくなり、それに関連して調達コストも上がった状況で、上期では予定していた納入が先送りになるなど、厳しい状況でもあった。
当社のグローバルネットワークを活用しながら、全社を挙げて部材調達と生産活動に取り組んでいる。2023年度もこの状況が継続すると見越して、サプライチェーンの見直しや調達先の拡大、これまで使っていた部品の選定を見直し、より入手しやすい部品に置き換えられるような生産方法の工夫も含めて取り組んでいく。
昨今、働き方改革により映像制作現場でも省力化・省人化が求められている。当社はロボットアームを使用したリモートプロダクションシステム「R2システム」を提案してきた。昨年はインカメラVFX技術と組み合わせて臨場感あるバーチャルプロダクションの提案とともに、スライドレール上でこれまでの動きと横の動きを連動させる、よりダイナミックなカメラワークの提案もしている。同じ動きを正確に繰り返すロボットアームを活用した他社とは違ったスタイルとして、番組制作やイベント関連の方々から引き合いが多かった。今後、スタジオなど常時運用ニーズへの販売と期間限定のレンタルビジネスの両輪で展開していく。
放送システムに関しては、昨年もお客さまのニーズに応える製品開発を強化した。4Kカメラはこれまでのハンディー型カメラに加え、大型のレンズと組み合わせて使えるスタジオカメラ「UHK-X750」を展開。4Kで2倍速、HDで最大8倍速までのハイフレームレート撮影が可能になるほか、IP機能を充実させた。放送局をはじめ、競技場向けにスポーツ中継やライブイベントなどに提案している。国内外市場で好評を得ており、特に海外では引き合いが多く、受注が順調に進んでいる。
スイッチャーシステムでは従来の大型と中型のほか、よりコストパフォーマンスに優れた小型スイッチャーを展開。伝送システムのFPU送信装置も更新需要に合わせて新たに固定回線用FPU送受信装置や4K対応一体型小型FPU装置(開発中)を提案している。
放送のIP化が急速に進んでいる中、IP化に対応した製品開発にも力を入れてきた。SDIとIP間のプロトコル変換を相互に行うゲートウェイ「IPMedia Gateway」(3月発売予定)を開発。今はオールIP化への過度期と言える中、SDIとIPが混在するシステムにおいて、これらを連携させるハイブリッドなシステムの主役となると考えている。
さらに、これまで培ってきた放送カメラ技術を産業分野(メディカルとセキュリティー)にも展開。特にメディカル用カメラは海外向けの引き合いが堅調で受注が伸びている。
23年は、R2システムの新たなバリエーションをビジネスに展開していくなど、これまで提案した製品・ソリューションを成果に結びつけていきたい。また、不安定な状況が続く中、お客さまが必要時期に必要な製品を確実に納めることができるよう、しっかり取り組んでいく。