2023.01.16 【電子材料特集】電子材料メーカー、国内外で生産能力増強 グローバル需要増大に対応

東京応化工業の熊本新工場の事業用地

 電子材料メーカー各社は、中長期での電子材料グローバル需要増大に対応するため、生産能力増強への設備投資を活発化させている。

 xEVや次世代IT端末、次世代半導体プロセス、カーボンニュートラル関連などでの需要増を見据え、今後も国内外での積極投資を行う。

 電子材料の世界需要は、コロナ禍からの経済回復を追い風に2021年は好調に需要が増大し、22年も総じて堅調に推移した。特に最近は、xEV化やADAS/自動運転技術の高度化が車載用電子材料ポテンシャルを押し上げているほか、5Gの本格化や半導体プロセス技術の進化、さらに脱炭素ニーズの高まりも、高性能な電子材料需要を増大させている。

各社、積極的に拡大

 電子材料各社は、いずれも中期計画や長期ビジョンで積極的な売上高・利益の拡大を計画している。直近の電子材料市場は、中国経済減速や欧米での高インフレ、コロナ特需からの反動などもあり、やや需要が鈍化傾向だが、23年も多くの電子材料メーカーが国内外での新工場や新工場棟増設、既存工場での生産ライン増設などを計画している。特に、BCP対応や半導体国内投資強化への対応などの観点から、国内生産体制増強の動きが活発となっている。

 東京応化工業は、熊本県菊池市に高純度化学薬品などを製造する新工場を建設する。23年春ごろに着工し、24年の年央には建物が完成する見通し。同工場建設により、今後の世界の半導体市場の成長に迅速に対応するとともに、国内生産基盤の強化、リスク分散につなげる。半導体フォトレジストも、郡山工場(福島県郡山市)や御殿場工場(静岡県御殿場市)での増強を計画する。

 RESONACは、半導体回路平坦化用研磨材料「CMPスラリー」の生産能力と評価機能増強のため、山崎事業所(茨城県日立市)、台湾子会社などで工場の新設や生産・評価設備の導入を行う。総投資額は約200億円を予定。これらにより、グループのCMPスラリー生産能力は約20%増加する見込み。また、銅張積層板の生産増強のため総額約100億円の大型設備投資を実施する。下館事業所(茨城県筑西市)と台湾子会社で25年までに半導体パッケージ基板用銅張積層板の生産ライン・設備を導入する。

 大陽日酸は、九州地区の特殊ガス物流機能を強化するため、今年1月1日付で熊本県菊陽町に事業所を開設し、特殊ガス物流拠点を新設した。昨今の熊本県を中心とした半導体関連企業の工場新設・設備増強により、半導体や液晶製造工程向け高純度な特殊ガス需要も大きく伸びると見込まれるため、熊本県に事業所を開設し、物流拠点の移転と特殊ガス容器保管施設の倍増を実施した。

 東レは、MLCC(積層セラミックコンデンサー)製造時の工程離型用ポリエステルフィルム「ルミラー」の生産能力増強のため、岐阜工場(岐阜県神戸町)の生産設備を改造し、生産能力を1.6倍に拡大する。25年からの稼働開始を予定。

 クラレは、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」のタイ新プラント建設が完了し、23年度第1四半期(1~3月)から稼働を始める。タイ新プラントの年産能力は1万3000トン。これにより国内と合わせたジェネスタ総生産能力は年産2万6000トンになる見通し。

 ポリプラスチックスは、台湾PTW(台北市)に年産5000㌧の液晶ポリマー(LCP)重合プラントを新設する。稼働時期は24年上半期を予定。

 同時に、電子材料メーカー各社の研究開発センターの新設・増設に向けた投資も活発化している。