2023.03.28 【電子部品メーカー・商社 中国拠点特集】中国の賃金、着実に増加 「共同富裕」指導方針が影響
上海市、4.4%増で最高額
中国では、急速な経済成長やインフレの進展、労働者不足などを背景に、各都市でワーカーの賃金上昇が続いている。2022年は法定最低賃金改定が見送られた都市が多かったが、実際の賃金は着実に上昇した。中国政府による「共同富裕」の指導方針もあり、今後も順次、各都市で法定最低賃金引上げが進むことが想定される。
中国の各都市の法定最低賃金は、かつては毎年1割以上の改定(値上げ)が実施されたが、近年は、2年または3年に1度の改定に移行している都市が多い。最近では、18年は多くの都市で1桁台半ば程度の改定が行われたが、19年は多くの都市で改定が見送られた。
20年は新型コロナ感染症拡大による景気低迷への懸念から、大半の都市で改定が見送られ、最低賃金を引き上げたのは江西省や福建省など3地域にとどまったが、21年は再び多くの都市で法定最低賃金が引き上げられた。22年は法定最低賃金を改定したのは一部の都市に限られたが、実際の企業の支払い給与は着実に増加している。
近年の中国法定最低賃金の上昇率は数年前と比較すると鈍化傾向だが、絶対金額自体が高くなっているため、外資系進出企業には大きな負担となっている。法定最低賃金に含まれない社会保険料などの付帯費用も年々増加している。
都市別では、上海市が21年7月の改定で月額最低賃金が従来比4.4%増の2590元となり、中国国内では最も高額となっている(香港を除く)。このほか、深圳市が22年1月の改定で同7.2%増の2360元に、北京市が21年8月の改定で同5.5%増の2320元に、広州市が21年12月の改定で同9.5%増の2300元に、蘇州市が21年8月の改定で同12.9%増の2280元に改定された。
中国では、政府による共同富裕の指導方針の下、今後も法定最低賃金が順次引き上げられていく見通し。23年の最低賃金改定はまだほとんどの地域で発表されていないが、賃金水準がトップの上海市をはじめ、いくつかの都市で改定が予想されている。
中国では、過去20年以上にわたる急激な最低賃金上昇で、すでに社員の給与レベルは相当な水準に達している。特に最近は、沿海部での若年労働者不足が深刻な状況のため、実際には法定最低賃金の1.3倍程度の条件を提示しないとワーカーの採用が難しい地域もある。
このため、中国進出の日系部品メーカー各社は、生産性向上のための改善活動を従来以上に強化し、生産ラインの自動化・省力化を通じた生産効率向上に全力を挙げている。製造設備の内製化や部材調達の見直し、中国内外注の活用などにも力が注がれる。同時に、生産品目の選択と集中による高付加価値製品シフトなどが図られている。
労働者の収入増は国民の購買力強化につながるため、中国国内の消費拡大と景気拡大にはプラスとなる。