2023.03.29 【関西エレクトロニクス産業特集】 関西産業界を支援する官庁トップに聞く 近畿経済産業局 伊吹英明局長

伊吹 局長

日本の蓄電池産業の競争力へ

人材育成・確保に注力

 -新型コロナウイルス対策も徐々に緩和されつつありますが、今後の関西経済の見通しについては。

 伊吹局長 国際情勢が不安定であり、資源高、物価高といった懸念材料はあるが、製造業については部品不足などに係る先行き不透明感は残るもののコロナ禍からの回復過程にあり、サービス業もウィズコロナを見据えた行動制限の解除や入国制限の緩和などにより需要が徐々に戻っている。

 足元では、価格転嫁を進め、賃上げを後押しし、インフレを乗り越える経済の好循環をつくることが必要であり、中長期的には、デジタル、CN(カーボンニュートラル)、ライフサイエンスなどの課題に対して官民ともにしっかり投資をして、今後の成長の礎を築くことが求められている。

 -大阪・関西万博もあと2年と近づいてきましたが、開催を契機とする地域活性化に向けた取り組みについては。

自治体などと連携

 伊吹局長 万博に来訪される国内の方々はもとより、世界各国の方々に、魅力ある関西各地域にも足を延ばしてもらえるよう、各地の観光、産品、地域ブランドや、最近各地で取り組みが盛んなオープンファクトリーなどの情報を発信するとともに、体験型産業観光施設に東南アジアの富裕層を呼び込む取り組みなどを行っており、今後も各自治体や各地域の企業などと連携して取り組んでいきたい。

 -脱炭素社会の実現が喫緊の課題となっていますが、そのカギとなる蓄電池産業の競争力の確保・強化については。

 伊吹局長 脱炭素社会の実現に向け、蓄電池は自動車の電動化、再エネの主力電源化のための最重要技術の一つだが、急拡大する世界市場の中で日本のシェアは低下している。

 こうした中で日本の蓄電池産業の競争力を強化するためには、バッテリー人材の育成・確保が不可欠である。そこで、当局と業界団体が事務局となり、産学官による「関西蓄電池人材育成等コンソ-シアム」を設立し、育成するべき人材像や教育内容などを検討してきた。

 今年3月に「バッテリー人材育成の方向性」を取りまとめ、2024年度をめどに関西地域で教育を開始するべくアクションプランを策定したところ。本取り組みをバッテリー人材育成のユースケースと位置付け、全国展開も視野に取り組みを進めていく。

 -新型コロナウイルスの影響による社会の変革に対応するため、中小企業向けのDX推進に取り組まれていますが、その状況とサイバーセキュリティー対策の取り組みについては。

DXの実現支援

 伊吹局長 あらゆる要素がデジタル化されていくSociety5.0に向けて、中小企業などのDX推進を実現する枠組みとして、関西情報センターが中心となり「関西DX実装イニシアティブ」を立ち上げた。地域の産業支援機関や民間企業、専門家などとの協力体制を構築し、地域企業の業務プロセスの抜本的改革による生産性向上や新規価値創出などのDX実現に向けたサポートを実施している。

 また、近年、中小企業を標的にした多種多様なサイバー攻撃が増えており、そうした背景から、企業のDX実現に不可欠であるサイバーセキュリティーを推進するため、関西の産学官などと連携した「関西サイバーセキュリティ・ネットワーク」を構築し、サイバーセキュリティーに関する人材発掘・育成、情報発信・交換、機運醸成に向けた取り組みを進めている。

 -昨今、大きく注目されている新たなモビリティーサービス(MaaS)の推進状況については。

MaaSを実証

 伊吹局長 100年に一度の大変革としてMaaSが世界的に注目されている中、経済産業省では、19年度から国土交通省と連携し、新たなモビリティーサービスの社会実装を通じた移動課題の解決や地域活性化を目指した「スマートモビリティチャレンジ」事業を実施している。

 22年度、関西では全国のモデルとなる先進的な取り組みを行うパイロット地域として奈良県川西町が採択され、MaaSの実証に取り組んでいる。

 引き続き、管内の先進事例の横展開や、さらなる高度化に取り組んでいきたい。