2023.07.14 【電子部品技術総合特集】主要電子部品メーカーに技術関連アンケート 電波新聞社まとめ

 電子部品メーカー各社は、今年度も積極的な技術開発活動を推進する。電波新聞社はこのほど、主要電子部品メーカーを対象に、技術に関するアンケートを実施した。回答企業は34社。それによると、2023年度の研究開発費計画は多くの企業が前期比増額を計画。新製品開発の重点分野では、自動車関連を筆頭に、通信インフラ、医療機器/ヘルスケア、新エネルギー関連などの分野が重要視されている。半導体などの部材不足は、完全に解消するにはもう少し時間を要するとみている企業が多い。地政学リスクなどを踏まえ、社内体制の見直しを行う、という企業も目立つ。

多数の企業が前期比増額を計画

23年度の研究開発費計画

 23年度の電子部品開発費計画は、多くの企業が前期比増額を計画する。回答29社中、約5割の14社が「増」と回答し、「減」とした企業は2社にとどまった。

 直近の電子部品市況は在庫調整によりやや軟調に推移しているが、開発費については積極姿勢がみられている。

昨年同様に自動車関連がトップ

需要分野別の新製品重点開発分野

 23年度における新製品開発の重点分野(複数回答)を聞いた。最も多かったのは昨年同様に「自動車関連」で27社。次いで「通信インフラ」が20社、3番目は「医療機器/ヘルスケア」と「新エネルギー関連」が18社で並んだ。以下、「FA・制御関連」「ロボット」と続いている。

 電子化/電動化が進む自動車は、多くの部品メーカーが最重点分野に位置付けている。通信インフラは、5Gが本格化し、6Gに向けた研究開発も始まりつつある。医療機器/ヘルスケアは、将来の有望分野として期待が高い。新エネルギー関連は、脱炭素ニーズが強まる中で、重要性が増している。

「生産技術開発」が最も多い

海外での設計、開発機能

 海外での設計、開発機能構築の質問(複数回答)では、最も多かったのは「生産技術開発」の16社。次いで「ユーザーへの技術サービス」が15社、「新製品開発」が13社となっている。

 市場のグローバル化への対応や外資系有力顧客へのサポートなどのため、海外での技術体制構築は重要性を増している。特に近年は、海外での人手不足や人件費高騰への対処のため、海外製造拠点の自動化・スマート化が重要度を増しており、現地の生産技術力向上が重視されている。

9割が産学共同で研究・開発

M&A/アライアンス/産学共同

 各社の研究開発に関するM&A(企業の合併・買収)やアライアンス、産学連携への取り組みを聞いた。

 「産学共同の研究・開発」についての質問では、回答32社中、「行っている」が28社と約9割を占めた。うち10社は「積極的に行っている」と回答した。

 「研究・開発におけるアライアンス」では、回答31社中、「あり」と回答した企業が計24社と約4分の3を占め、うち9社は「国内外いずれの企業ともアライアンスがある」と回答した。

 「研究・開発におけるM&Aの取り組み」は、「国内企業の買収実績がある」が13社、「海外企業の買収実績がある」が4社。「実績はないがよい案件があれば検討する」とした企業も9社を数えた。

4分の3がロボット導入済み

工場のスマート化

 電子部品各社の工場のスマート化の取り組みなどを聞いた。

 「量産工程へのロボット導入」については、回答32社中、4分の3の24社が「導入済み」、「導入を検討中」の企業も3社みられた。

 「デジタル革新による自社工場のオペレーション刷新やスマートファクトリー化、生産性向上への取り組み」についての質問では、回答30社中、半数の15社が「活用を始めている」と回答。「近く導入予定」も4社が回答した。

サプライチェーン見直しなど

開発体制や生産体制の見直し・強化について

 地政学リスクの高まりなどを踏まえた開発体制・生産体制の見直し・強化について聞いた。

 「米中摩擦やロシアのウクライナ侵攻などの地政学リスクを視野に入れた開発体制や生産体制の見直し」についての質問では、回答29社で、「見直しを行う」と「見直しを行わない」がほぼ半数ずつとなった。

 具体的な見直し内容では、「サプライチェーンの見直し・変更」「生産拠点のグローバルでの分散化強化」を挙げる企業が多かった。

 「グローバル体制拡充や最適化を進める上で、今後生産比率を高めるエリア」の質問では、「東南アジア」が18社で最も多くなり、次いで「日本」が11社で続いた。

調達部材不足、24年以降も続く

半導体/部材不足の見通し

 半導体をはじめとする調達部材不足の解消時期予測について聞いた。

 それによると、回答21社で、「すでに解消した」としたのは2社にとどまり、24年1月以降も続くとした企業が計8社に達した。「24年10月以降も続く」と回答した企業もみられる。

製造コストの影響、強く受ける

電子部品の価格是正の取り組み

 原材料価格高騰やエネルギーコストの高止まりが続く中で、電子部品業界では、安定供給体制を維持していくため、販売価格の適正化が重要性を増している。

 「原材料価格高騰やエネルギーコスト上昇、円安による電子部品製造コストへの影響」の質問では、回答33社中、6割強の19社が「強く影響を受けている」と回答。「ほとんど影響なし」と回答した企業はみられなかった。

 「販売価格是正の取り組み状況」の質問では、「多くの品目で値上げを実施している」と「一部の品目で値上げを実施している」の企業の合計が26社となり、「値上げは行わない」と回答した企業はみられなかった。

アンケート回答企業一覧

 ▽旭工芸▽朝日ラバー▽アルプスアルパイン▽イリソ電子工業▽SMK▽NKKスイッチズ▽オータックス▽岡本無線電機▽岡谷電機産業▽京セラ▽KOA▽指月電機製作所▽シライ電子工業▽スミダコーポレーション▽セイコーインスツル▽双信電機▽大陽ステンレススプリング▽太陽誘電▽TE Connectivity▽トーキン▽ニチコン▽日清紡マイクロデバイス▽日本ケミコン▽日本航空電子工業▽日本シイエムケイ▽日本電波工業▽バイコー▽ヒロセ電機▽北陸電気工業▽ホシデン▽本多通信工業▽ミネベアミツミ▽村田製作所▽メイコー。(34社・五十音順)