2023.07.27 【半導体/エレクトロニクス商社特集】トレックス・セミコンダクター パワー半導体に参入 新製品の開発を事業の柱に
芝宮 社長
トレックス・セミコンダクターは、得意とする小型・省電力・低ノイズ技術を生かし、付加価値の高い電源ICを提供している。設備投資の抑制や在庫調整が続き市況が停滞する中、新たな取り組みを加速。パワー半導体事業に参入するとともに、新製品開発を事業方針の柱に据え、製品力の強化を図る。
同社は前期(2023年3月期)、上場来最高となる売上高319億5600万円、営業利益39億7600万円の実績を達成した。この実績は、中期経営計画で掲げた25年度連結売上高350億円、営業利益40億円の目標に近似した数値となる。そのため、中計の成長性戦略は継続しつつ、新たに業績目標の期間を拡大し再設定した。
拡大中期業績目標では25年度に連結売上高370億円、営業利益55億円、28年度に連結売上高450億円、営業利益80億円を目標として掲げた。
この目標を達成するため同社はパワー半導体事業に参入。まずはパワーMOSFETのラインアップを拡充する。モーター制御やインバーター、EV充電器向けをターゲットとし、中耐圧大電流製品に注力する。SiC製品の開発も加速。今年5月には子会社フェニテックセミコンダクターが開発したSiCを用い、850V/10Aのショットキーバリアダイオードのサンプル出荷も開始した。
芝宮孝司代表取締役社長は「今後、EVの普及や省エネの推進を考えるとパワー半導体の需要はますます大きくなる。電源ICで培った当社の強みを生かしたパワー半導体を提供していく」と話す。
電源ICの新製品開発にも注力する。コイル一体型のDC-DCコンバーター「XCLシリーズ」は、構造や特性を変えラインアップを拡充している。
6月に発売した「XCL233シリーズ」は同社のコイル一体型DC-DCコンバーターとして、初めて出力電圧2値切り替え機能を搭載した製品。待機時は低電圧を供給し、センサーや通信の動作時には高電圧を供給し、小型機器の電池駆動期間を伸長できる。
芝宮社長は「XCLシリーズは構造を変えることでノイズ特性や放熱性など特性を出すことができる。売り上げも年率約1.5倍で成長しており、今後もラインアップを拡充する。今期は〝開発ファースト〟を事業方針とし、特徴ある製品を顧客に届けたい」と話す。