2023.08.09 【コネクター特集】コネクターメーカー各社、生産・開発体制拡充を推進
今年6月に完成した山形航空電子第2工場新棟(B棟)(左側の建物)
国内外で新工場など積極投資
需要増で生産能力拡大
コネクターメーカー各社は、今年も国内外で新工場建設や既存工場の拡張、新たな技術センター構築に精力的に取り組んでいる。各社は、中長期でのグローバル需要増大への対応やBCP(事業継続計画)対応強化、成長領域でのイノベーション強化のための積極投資を推進する。
コネクター各社の新工場建設や新工場棟増設の動きは、2017年頃から19年頃まで活発さが継続し、ASEANや中国を軸に、積極投資が実施された。同時に、国内外での試験・評価体制の増強や工場のスマートファクトリー化、モノづくり力強化のための最新鋭設備の導入なども進んだ。
20年から21年前半にかけては、新型コロナウイルス禍による先行き不透明感などを背景に、不要不急の投資を先送りする動きも一部で見られたが、コネクターのグローバル需要増大を背景に、21年後半以降は再度、設備投資への機運が高まり、21年後半から22年にかけて、積極的な生産能力増強が行われた。
足元のコネクター市場は、世界的なICT機器需要の低迷や設備投資需要の減速、産機市場での在庫調整、中国経済の低迷長期化などにより、調整局面となっているが、コネクター業界では、中長期でのコネクター需要の増大やBCP対応強化、地産地消対応などを踏まえ、今年から24年にかけても多くの企業が国内外で新工場建設や既存工場増設などを計画している。
特に最近は、車載や産機向けなどの高付加価値製品の生産能力増強や、米中対立の激化を視野に入れたサプライチェーン強靭化(きょうじんか)などのため、国内工場への再投資や新たな国内製造拠点建設などの動きも目立っている。
各社は、将来の需要増大に対応するための生産キャパシティー拡大に前倒しで取り組むとともに、より高度なモノづくりの推進やスマートファクトリー化を進めることで、モノづくり力の一層の強化を目指す。
ヒロセ電機は現在、生産技術開発拠点の「東北アドバンスト・テクノロジーセンター(TATセンター)」(盛岡市)の建設や連結子会社の郡山ヒロセ電機(福島県郡山市)の新工場建設に着手しており、ともに24年中の稼働を予定している。このほか、今年8月には韓国の「ヒロセコリア精密センター」の増築にも着工する予定。
また、22年10月には高度な制御技術を持つエー・ディー・ディー(盛岡市)の全株式を取得し、TATセンター設立に合わせて同社の人材を投入することで、生産設備におけるハードウエア・ソフトウエアの大幅な進展を図る。
郡山新工場は、車載・産機を中心とする先端「モノづくり工場」として整備する。
供給網を強靱化
日本航空電子工業は、コネクター事業の生産拠点である山形航空電子(山形県新庄市)第2工場の新棟(B棟)を今年6月末に完成させた。電気自動車(EV)向けの大電流・高電圧コネクターなどの生産能力拡大を図るとともに、自動車・産機向けなどの国内生産拡大により、サプライチェーンの強靭化を進める。同工場ではグループとして最大クラスのプレス機・成型機を導入し、今後も順次、設備増強を推進する。
イリソ電子工業は、国内新工場を秋田県横手市に建設する。23年度に着工し、25年の操業開始を予定。今後のxEV向け車載機器を中心とした需要増大、マルチ生産体制によるBCPおよびマーケット・インによる物流費の低減と生産効率を見据え、新工場建設を決めた。同社では、さらに岩手県花巻市に金型の新工場を建設することを決めた。新工場は今年末の操業開始を予定しており、同社グループの成形金型技術の中核拠点となる予定。
山一電機は、半導体テストソケットやコネクターの生産体制増強のため、佐倉事業所(千葉県佐倉市)の敷地内に新棟を建設する。今年2月に着工し、24年4月の生産開始を予定。さらに、海外でも半導体テストソケットの生産能力増強などのため、フィリピンで新規生産工場建設用地を取得した。
外資系でも計画
外資系コネクターメーカーでは、TE Connectiyityは、22年に中国で昆山工場(江蘇省昆山市)と蘇州エンジニアリング&デザインセンター(江蘇省蘇州市)を竣工(しゅんこう)した。
さらに、中国でオートモーティブ事業5工場の建設計画を公表している。
米SAMTECは、新たな技術センター兼製造拠点である「台湾デザインセンター」(台北市)をオープンさせた。立地場所は、台北市新台北エリアで、既存の台北拠点から、製造部門と技術部門を移転、拡張した。台北デザインセンターでは、同軸コネクターのアセンブリーを行い、今後はミリ波帯などの最先端コネクターのアセンブリーも立ち上げていく方針。