2023.08.24 【化学材料特集】積水化成品工業 「テクポリマー」の用途拡大を推進

テクポリマー ポリイミド中空微粒子の断面

 積水化成品工業は、発泡技術や重合技術を生かし、幅広い産業の進化を支えている。電機・電子分野向けでは、独自の重合技術を用いたポリマー微粒子「テクポリマー」の用途拡大を推進。5Gや半導体用途などでの採用を目指す。

 テクポリマーは、メタクリル酸メチル、スチレンをはじめ、各種疎水性ビニルモノマーをベースとしたポリマー微粒子。液晶ディスプレーやLED照明の光拡散材としての光学用途のほか、塗料や化粧品の添加剤として幅広い分野で使用されている。

 近年、用途拡大の取り組みを進めており、半導体パッケージや実装部材に添加することで、低誘電特性などの機能を付与できる。5Gなどの高周波領域では、低誘電特性を与えることで伝送損失を抑えることが可能だ。

 低誘電用途向けでは①中実タイプのほか、②粒子内部に中空構造を持ち、誘電特性を低下させる中空タイプ③誘電特性を下げるとともに耐熱性も付与できる中空タイプ高耐熱グレードなど、粒子構造が異なる3タイプを用意。半導体の生産においては熱が加わる工程も多く、高耐熱のニーズは高い。

 同社はこのほど、神戸大学の南秀人教授らの研究チームと共同でポリイミドをシェルにした中空微粒子の量産化技術を見いだし、低誘電特性・耐熱性に優れた球状の「テクポリマー ポリイミド中空微粒子」を開発した。ポリイミドは高耐熱性に加え、機械強度や化学安定性、低誘電特性に優れ、幅広い分野で応用されている。その一方、高耐熱であるため加工が難しく、中空粒子の作成報告がほとんどなかった。

 ポリイミドは高周波用途に適した低誘電特性を有し、封止材や銅張積層板などで使用されるケースも多い。添加剤としてポリイミド中空微粒子を利用することで、熱膨張係数も同じレベルとなり、クラックなどを防ぐことができる。現在、製品化に向けて準備を進めており、2025年中の発売を目指す。

 テクポリマーは用途に応じてカスタム可能で、粒子径調整や粒子表面改質などに対応。平均粒子径はナノオーダーから数十マイクロメートルまで幅広く対応。誘電率、誘電正接ともモデル上は約20%低下できる。

 高耐熱製品などグレードの拡充に取り組むほか、具体的なデータをそろえ、顧客の品質評価など迅速に進めていく。