2023.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】市場動向 データセンター
「データドリブン」に対応 市場は拡大も脱炭素へのシフトが急務
デジタル社会の基盤となるデータセンター(DC)市場が拡大している。IoT、AI(人工知能)などを活用した「データドリブン」時代に対応、ハイパースケール型DCの開設が相次いでいる。一方、グリーン化などの脱炭素へのシフトも急がれている。
IDC Japanでは、このほど国内のDC事業者のDC投資予測を発表した。DC建物、電気設備、冷却システムなどの新設および増設額を調査したものだが、事業者DCの新設および投資額は2023年から24年にかけ大きく増加する見込みだ。
23年の投資金額は3222億円、前年比16.4%増の2桁成長の見込みだ。さらに24年は23年比約1.55倍の大幅な増加となり、5000億円を超えるものと見られている。27年にかけては毎年5000億円を超える投資規模が継続すると予測している。
IDC Japanでは「クラウドサービス向けハイパースケールDCの増設需要が、拡大しているため」と分析している。
また、先にまとめた同社による国内DCのサービス市場も、26年まで2桁成長が見込まれ、市場規模は22年の約2兆円が26年には約3兆2000億円を予測している。
本格的な「データ利活用時代」を迎え、DCの市場規模は拡大の一途と言える。各種クラウドサービスに対応するため、大規模DCの開設が活発化しているが、クラウドサービスに対応したハイパースケール型と同時に、サイバーテロ対策などセキュリティーの強化、さらにカーボンニュートラル対応など脱炭素に向けた取り組みも本格化している。
今年の4月には、米グーグルが、100%再生可能エネルギー使用のDCを千葉県印西市に建設、稼働させた。同社は、24年までに日本国内に1000億円を投資する計画で、DC建設もこの一環だ。
NECは、100%再生可能エネルギーを活用した「NEC神奈川データセンター二期棟」を23年下期に、「NEC神戸データセンター三期棟」を24年上期に新たに開設する。同社は、30年度までの温室効果ガス削減目標を17年度比55%とする目標を定めている。新DCでは、集中熱源、冷暖分離、発熱状況に応じた風量制御などの総合的な省エネルギー対策により、国内DCでは、最高クラスの環境性能を実現する。
大手DC事業者のアット東京は、4月からハウジングサービスなどに使用する電力を、実質再エネ100%で提供開始した。
NTTデータでは、30年までに再エネ化とともに、電力消費を可視化するシステムを開発、運用を開始した。
インターネットイニシアティブ(IIJ)では、クラウドやネットワークサービスなどの基盤設備を集約したハイパースケール型DCとして、18年に千葉県白井市に「白井データセンターキャンパス」を開設。さらに増設を進めていた2期棟の運用を今年7月から開始した。同2期棟は最大受電容量10MW、1100ラック規模の収容力を持つ。
同社は、島根県の松江市と千葉県白井市に自社DC拠点を持つが、いち早く脱炭素化へ向けカーボンニュートラルDCリファレンスモデルを提唱している。また、白井DC利用者への脱炭素化推進を支援する取り組みとして、非化石証書の直接調達を開始し、24年度から商用化に踏み切る。
キヤノンマーケティングジャパンでも、新たに建設した西東京DCの2期棟が満床状況で、早くも3期棟目建設の検討を開始した。同社は、成長戦略の核にITサービス事業を掲げ、環境に配慮した最新鋭DCを同事業の基盤に位置付けている。
こうした動きとともに、今後、注目されるのがDCの地方への分散設置の動きだ。国内のデータセンターは、約8割が東京、大阪など都市部に集中する。経済産業省も地方への分散設置を支援する意向だ。電力事情やリスク分散の観点からも、DCの地方分散化が本格化する可能性が高い。
また、エッジコンピューティング市場の拡大に対応、空調、電源などのファシリティー、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器などを一体化したエッジDC、マイクロDCも今後普及が期待されている。
さまざまな分野でデータの利活用が本格化し、データ量の急増に対応したDCの需要拡大が続く。災害対策、環境対策、同時に高いコネクティビティーを持ったDCの整備が、デジタル社会実現のために急がれる。