2023.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】市場動向 電帳法・インボイス
電帳法は2年間の猶予期間が年内で終了、来年から義務化される
法令改正へ待ったなし ベンダーの支援も活発化
改正電子帳簿保存法(改正電帳法)やインボイス制度(適格請求書等保存方式)の施行を契機に、業務の電子化など業務改革の進展が期待されている。10月からのインボイス制度導入まで1カ月。改正電帳法は12月末で2年間の猶予期間が終わる。法令改正は秒読み段階だ。中小企業はITの専任人材が少なく、法令改正への対応も遅れが目立つ。ITや事務機のベンダー側の支援も不可欠だ。法令改正を中堅・中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化につなげたい。
DXが叫ばれている中で、中小企業のDX化は遅れている。2022年度版「中小企業白書」によると、「デジタル化の必要性を感じている」は66.0%だったのに対して、「デジタル化による変革や競争力強化に取り組んでいる」は10.2%にとどまっている。
リコーとリコージャパンが、今年の春に行った顧客約2700人を対象にしたDXアンケート調査でも、こうした傾向が浮き彫りになった。回答企業の63.1%が「DXへの取り組みが必要」「ある程度必要」と回答。一方で「既にDXに取り組んでいる」と回答したのは19.1%で、DXが必要だと感じているものの、実際にDXを進められていない企業が多い。
こうした背景もあり、政府もデジタル化の推進を積極的に進めている。電帳法の改正やインボイス制度の導入も、デジタル化の促進が狙いの一つ。遅れていた中堅・中小企業の電子化、DX化を促進するものと期待されているところだ。
過去、電帳法は何回か改正されてきた。16年からはスキャナー対象書類の金額「3万円未満」が撤廃され、17年からはスマートフォンなど仕様を満たした電子デバイスの利用が可能になった。
そして、22年1月施行の改正電帳法では、電子取引データの厳格な保存が義務付けられた。電子契約、EDI(電子データ交換)取引、メール添付、FAX受信文書などの電子取引の電子データ保存が義務付けられ、紙媒体での保存ができなくなった。一方、スキャナー保存の要件緩和などが行われ、タイムスタンプが不要になった。法施行後、2年間の猶予期間が設けられたが、今年末に終了し、24年1月から正式に義務化される。
また、10月には消費税の新制度としてインボイス制度が施行される。インボイス制度は、売り手が買い手に正確な適用税率や消費税額などを伝えるもので、買い手が消費税の仕入税額控除を行うには、売り手からインボイスを取得し、保存しておく必要がある。
いずれにしろ、改正電帳法への対応やインボイス制度は、やらざるを得ない待ったなしの問題だ。これを入り口として、どう業務の電子化、DX化を実現していくかが重要だ。
中堅・中小企業は、大企業に比べDXが遅れている。人材不足を背景に、ITの専任担当者を置けず、コスト面でも大きな負荷となっていることが、DX化の遅れの要因になっている。
こうした中、全国規模で拠点を持ち、中小企業を顧客に抱える事務機大手とクラウドなど専門ベンダーとの業務提携や販売提携が活発化している。
リコージャパンとSansanは、電帳法やインボイス制度で業務提携した。Sansanのインボイス管理サービス「Bill One」をベースに共同企画した新サービス「Bill One for RICOH」を提供している。全国規模でネットワークを持つリコージャパンと経理業務などのDXサービスを提供するSansanの強みを連携させている。
富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)とTOKIUMは、請求書クラウドサービス「TOKIUMインボイス」の提供で協業している。TOKIUMインボイスは、紙やPDFなどで届く請求書をクラウドに登録、ユーザーがクラウド上で請求書の仕訳・認証・承認などを行うことができるサービスで、インボイス制度に対応している。
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、NIコンサルティングと戦略的業務提携を結び、グループウエア「NI Collabo 360」へのシームレスな連携を実現するアプリケーション「MEAP クラウドスキャン for NI Collabo」を提供している。
事務機メーカー各社では、複合機と連携したソリューションを強化している。リコーは紙やメール、ファックスなど、さまざまな形式で送られてきた証憑をクラウドにアップロードするだけで、電帳法改正に対応できる「RICOH 証憑電子保存サービス」を提供。
富士フイルムBIは「10万円からできる電帳法」が好評だ。キヤノンMJは「DigitalWork Accelerator(DWA)」シリーズで、電帳法に加え、インボイス制度に対応した「請求書受取サービス」を提供開始した。
コニカミノルタジャパンでは電子取引のデータ保存に対応した「電子取引スタートパック」を、エプソン販売は電帳法に対応したクラウド会計システム「Weplat(ウェプラット) 財務応援 R4シリーズ」を、8月下旬から発売している。