2023.11.10 【育成のとびら】〈14〉部下への効果的なフィードバックの方法とは 改善・成長に導く三つのフレーム

 前回(第13回)は、当社ラーニングエージェンシーが行った管理職の業務比率と部門目標や部門計画の達成の関連についての調査結果から、「部門の目標や計画を達成している管理職は、プレーヤー業務よりマネジメント中心に取り組んでいる割合が高い傾向がある」ことを紹介した。

 今回は、同じく管理職1715人から回答を得たアンケート調査から、部門の目標や計画の達成と部下の成長の関係を見ていきたい。

 部下の成長について管理職の所感と、目標・計画達成の関係性をクロス集計したところ、目標達成度合いと部下の成長性に一定の相関関係があることが分かった。

 それによると「毎年、部門目標や部門計画を達成している」と答えた管理職のうち、約7割が部下について「非常に成長している」「成長している」と答えている。

 一方、「残念ながら達成したことがない」と答えている管理職において、「部下が非常に成長している」「成長している」と答えた割合は36.5%、「あまり成長していない」「成長していない」との回答が約半数だった。

 さらに「達成したことがない」管理職は、「分からない」という回答も14.6%と、達成している管理職よりも多かった。

成長促す指摘方法

 目標や計画を達成している部門の管理職は、部下の成長を実感している割合が高いという結果を踏まえ、ここでは部下の成長を導く上で重要な「フィードバック」のポイントについて、再点検してみたい。

 そもそもフィードバックの目的は、上司が部下に業務上の問題点を伝えて改善案をともに考え、行動変容を促すことにある。正しいフィードバックは部下がさまざまな業務に挑戦し、成長する上で欠かせない。

 一方で部下に自身の課題を自覚してもらうためには、上司は課題が発生している背景や事実情報を収集した上で指摘する必要がある。原因や背景を確認しないまま指摘すると、部下の納得感が得られず、成長や改善の妨げになるからだ。

 また、フィードバックは単なる「ダメ出し」ではないという認識も持たなければならないだろう。部下と上司が双方向のコミュニケーションをとり、対話の中で今後の改善案を見つけていくことが重要なポイントとなる。

 さらに、部下が前向きに指摘を受け入れ、改善につなげるための具体的な方法として、「GOOD(良い点)」「MORE(課題)」「NEXT(今後の取り組み)」という三つのフレームを意識して取り組むと効果的だ。まれに部下の「GOOD」が見つからないという上司もいるが、成果だけでなく、何か課題に取り組んでいるという過程も含めた頑張りそのものも対象になる。

 まずはいたわりの言葉をかけるところからスタートし、具体的、効果的な指摘ができるよう、部下への観察に取り組んでほしい。

 フィードバックは決して簡単なコミュニケーションではないが、部下自身もその重要性を認識していることを併せて伝えておきたい。2023年に当社とラーニングイノベーション総合研究所が新入社員4428人に行ったアンケートでは、「自分のキャリアアップにつながる理想の上司」として、6割が「間違いを指摘して正してくれる上司」を選んでいるからだ。

 より効果的なフィードバックができれば、部下の信頼も厚くなり、成長も期待できる。ぜひ三つのフレームを活用し、より成長につながるフィードバックを実践してみてほしい。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は11月第4週に掲載予定】