2020.03.25 【関西エレクトロニクス産業特集】25年に向け発展可能性秘めた近畿産業 近畿経済産業局 米村 猛局長に聞く
米村 局長
コネクテッドインダストリーズが重要 データ共有さらに促進
-関西の電子産業、情報産業の状況をどう見ますか。
電子部品が好調
米村局長 まず、直近の新型コロナウイルス感染症への影響について、封じ込めに全力を尽くすが、観光、宿泊、小売りなどに加え、産業全般に影響があり得る。これを緩和するため政府として、10日に強力な資金繰り対策やサプライチェーン毀損対応等の緊急対応策第2弾を決めた。電子産業等にも資金繰りなどでお困りの企業があると思う。サプライチェーンに弱さが見られるとすれば、年に複数回募集など使い勝手がよくなったものづくり補助金やIT補助金もある。ぜひ、これらを活用して難局を乗り切っていただきたい。
少し短中期的な動向だが、例えば、近畿地域(福井県を含む2府5県)の電子部品については、鉱工業生産指数で平成30年度と同26年度を比較すると、近畿はプラス19.6と全国のプラス16.4よりも好調だ。また、ソフトウエア業では、特定サービス実態調査で平成30年と同26年を比較すると、全国プラス16%に対して近畿はプラス32%とかなり高い。
-関西の電子産業や情報産業での具体的な業界との連携は。
米村局長 象徴的なワードで言うと「コネクテッドインダストリーズ」が重要だ。様々な主体、例えば産業、企業、機械、人などがデータを介してつながることで、新たな付加価値の創出や社会課題の解決をもたらすデータ共有をさらに促進させたい。「2025年の壁」という課題があるが、複雑化・ブラックボックス化した既存システムを刷新しつつ、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)を進めることが喫緊の課題だ。
体制面では、「関西ものづくりIoT推進連絡会議(PIIK)」というプラットフォームを、近畿総通局や関西の21の情報関連団体と設立している。この延べ1200社を超える会員企業とのネットワークは関西の強みであり、業界連携の素地となっている。
-関西企業のIoT利活用の現状は。
米村局長 中小企業は大企業と比べ、IoTやAI導入に総じて消極的だ。IoTについても、大企業・中小企業ともに導入しない最大の理由が〝導入後のビジネスモデルが不明確〟となっている。
経産省では、地方版IoT推進ラボ事業やスマートものづくり応援隊事業によるベストプラクティス共有や専門家派遣などを通じて、地域や中小企業におけるIoTの利活用を促進してきた。
-AIへの関心が高まりつつある中、社会実装に向けて取り組まれていることは。
米村局長 昨年度、AI導入事例を紹介する〝AI導入Navigator2019〟を作成した。AI導入に関するベンダーとユーザー間での意識の差を解消するため、セミナーやワークショップも行った。来年度はAI人材育成の事業も加え、AIの社会実装をさらに加速化する。
-サイバーセキュリティ対策は進んでいますか。
米村局長 IPA(情報処理推進機構)の〝情報セキュリティ10大脅威2020〟では、対策の手薄な取引先や関連企業を狙ったサプライチェーン攻撃の脅威が引き続き上位に入った。
多くの中小企業がサイバー攻撃を受けているという実態が各種調査から明らかになっており、サイバーセキュリティ対策は「自分ごと」として対応しなくてはならない。
-今後の展望は。
5Gにチャンス
米村局長 5G元年といわれる中、大きなチャンスがある。5Gに関連する情報通信インフラが加速的に整備されていく中にあっては、IoTやAI等の技術実装が鍵であり、人材育成なども重要だ。もう一つ、新型コロナウイルスが契機になって、テレワークや省力化投資がさらに注目され、シリアスな形で実装されていくだろう。その際、情報機器、IoT機器などの導入方策、サイバーセキュリティ対応など様々な「課題解決能力」が試される。関西の強みを様々なプラットフォームなどで磨きながら、関西産業が世界に向けて発展していくことをお手伝いしていきたい。
そして、その先に25年大阪・関西万博があるのも、関西の強み。この万博は、様々な未来を引き寄せてつなげる装置だ。これに向けて、電子産業などがベクトルを合わせ、関西が一丸となって取り組めるよう、当局として全力を尽くしたい。