2024.01.01 【AV総合特集】’24展望 デジタルカメラ

カメラ各社はミラーレスを中心に、本体とレンズのラインアップを拡充している

ミラーレスが市場をけん引 動画撮影にも利用拡大

 出荷台数の減少が目立ちがちなデジタルカメラ。その実、中身を見ると様相は一変する。小型・軽量で高精細な撮影を可能とするミラーレスカメラが年々存在感を発揮し、市場をけん引。訪日外国人によるインバウンド需要も復活する中、今年もミラーレスを中心に高付加価値品が人気となるはずだ。

 「『Shoot』『See』『Share』が、当社が考えるイメージングのエコサイクル。エコサイクルを回し続けることで、今年も昨年以上の成長を目指していく」。イメージング事業の好業績を背景に、そう自信を見せるのは富士フイルムの山元正人取締役専務執行役員イメージングソリューション事業部長だ。

 富士フイルムは2023年度、デジカメなどのイメージング事業で売上高4450億円、営業利益880億円を予想しており、00年度以降の最高業績を計画する。背景にあるのが、「X-T5」や、〝ダブルフラッグシップ〟の「X-H2」と「X-H2S」など販売が好調なミラーレスの存在だ。

 デジカメは、スマートフォンの登場によって市場を「食われた」と見る向きも少なくない。事実、10年の1.2億台超という出荷台数をピークに、スマホの登場・拡大と歩調を合わせるように出荷は減少。カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計では、22年で約800万台、23年1~10月でも約650万台となっている。

 この急激な変化を見ると、「スマホに食われた」と指摘されても仕方のない面もある。実際、スマホとの差別化が難しくなったレンズ一体型のコンパクトデジカメ(コンデジ)は市場での立ち位置を急速に失っていった。代わりに存在感を発揮してきたのがミラーレスだ。

 スマホのカメラも、高画質な写真や動画の撮影を可能にしている。半面、カメラ専用機としての性能の高さや細かな設定によるシーンに合わせた撮影、レンズ交換の楽しさなどはミラーレスに軍配が上がる。

 細部にこだわったデザインも、ユーザーの所有欲を満たすことにつながっている。ファッションの一部のようにミラーレスを持ち歩く「カメラ女子」が登場するなど、撮影以外のシーンでもこれまでにない価値を提供するようになった。

 ■AIによる撮影の進化

 デザインを含めて人気を集めるミラーレスだが、最大のポイントは、スマホでは難しいシーンや画質で撮影できることだ。ここではAI(人工知能)の存在が不可欠になっている。

 高級機であれば、AIが人や動物、車などを自動で見分け、高速でピントを合わせてくれる。撮影者は構図だけを気にかけてシャッターを押せば済むようになり、カメラの性能向上によって「以前とは撮影の仕方が変わった」(業界関係者)という声もよく聞くようになった。

 コンデジや一眼レフの減少によってデジカメ全体では出荷台数が微減となる中、ミラーレスに関しては昨年1~10月で約407万台と前年同期から2割以上伸ばしている。円安を背景に訪日外国人がミラーレス高級機を購入していくケースも増えており、想定を超える需要に、一時供給を止めるメーカーもあったほどだ。

 ■動画撮影の多様化を商機に

ミラーレスは動画撮影領域にも拡大している

 写真撮影におけるスマホとの差別化に加え、もう一つ大きなトレンドとなっているのが、動画撮影領域への拡大だ。高画質を武器に本格的な動画撮影ニーズに応えるとともに、Vlogといった手軽な動画撮影に対応する機能を備えた機種も登場した。

 ミラーレスではないものの、昨年にはキヤノンがコンデジのブランド名「PowerShot」を冠したVlog専用カメラ「PowerShot V10」を発売するなど、カメラ各社も熱い視線を送る市場だ。

 無線接続により撮影した動画をその場ですぐに編集現場に送るなどの対応もミラーレスでは可能だ。

 富士フイルムの山元取締役専務執行役員イメージングソリューション事業部長は「プロの動画撮影からVlogのような使い方まで、動画も多様化している。大きな方向性として今後も動画機能は強化していく」と強調する。

 ■交換レンズの底上げにも

 ミラーレスの盛り上がりで、交換レンズの需要も底上げされている。昨年1~10月はほぼ前年並みの出荷台数で推移したが、APS-Cサイズなどミラーレスで多い35ミリメートル未満のセンサーサイズ向けに限れば前年伸長を遂げている。

 撮影シーンに合わせて最適なレンズを使う楽しさも、レンズ交換型のミラーレスならではのもので、カメラ各社もレンズのラインアップを強化していく方針を示す。

 デジカメ市場は10年前と様変わりした。コロナ禍が明けたことで外出機会が増え、趣味・嗜好(しこう)品として改めて存在感を発揮し始めている。カメラは世界的にも日本企業が強い分野。インバウンド需要の復活で訪日外国人からも熱視線が注がれており、今年もミラーレスを中心に市場の盛り上がりに期待がかかる。