2024.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’24各社の戦略 富士通ゼネラル 中川陽介経営執行役常務

中川 常務

暖房強化型エアコンに注力
高級機で専用アプリを進化

 昨年は6~8月が統計以来の記録的な暑さになるなど、エアコン販売が猛暑に下支えされた半面、新型コロナ下で需要が先食いされていたことで、全体的には前年を下回る結果となった。エアコンなどの省エネ家電に各地の自治体が補助金を助成していたことも、前倒しで需要を取り込む結果になっているのではないかと見ている。

 そうした中、好調なのは北海道や東北といった北日本地域での暖房強化型エアコンの販売だ。これまでにない暑さとなったことで需要が拡大している。特に寒冷地向けエアコンの販売構成比が2、3ポイント増えている。

 寒い地域では、暖房能力がより重視される。暖房強化型の「ゴク暖ノクリア」ZNシリーズには「バイパス暖房」を搭載し、除霜運転中も暖房運転を継続できるようにしている。標準地向け高級機「ノクリア」X/Zシリーズにも一部搭載しているが、なじみのないお客さまは除霜運転中にエアコンが止まってしまうと、故障と勘違いをしてコールセンターに問い合わせをされるケースも一定数ある。お客さまがストレスなく暖房を継続して利用できるように、暖房能力の強化と合わせて対応した形だ。

 物価高と省エネへの関心も高いため、2027年を目標年度とする新しい省エネ基準を全クラスで達成したWシリーズの販売にも引き続き力を入れていく。高い省エネ性や暖房能力を実現しつつ、購入しやすさを追求したモデルで、販売も伸びている。

 昨年12月からは、W/Vシリーズなどの購入者に先着5000個で無線LANアダプターをプレゼントするキャンペーンも展開している。昨年夏にも実施して好評だった企画の第2弾といった位置付けで、スマートフォンから操作する利便性をより多くのユーザーに体感してもらいたい。

 24年1月には新しいX/Zシリーズを発売する。一部の大型クラスを除き、27年の省エネ基準もクリアしている。24年のエアコンラインアップは全56機種のうち33機種、約6割で新しい省エネ基準を達成することになる。

 新型X/Zシリーズでは専用アプリを進化させ、ユーザーのいる位置に向けて細かく風向を変えられるようにする。リモコンでは難しい操作だが、直感的に操作できるスマホであれば可能だ。今後は対応する他機種への展開も検討していく。

 23年度のエアコン需要は年間850万台程度と見ている。24年度も急激に増えるようなことはないだろう。一家に2、3台の設置が当たり前となってきたエアコンの基礎需要は高いとみているが、競争も激しい市場。省エネ性と暖房能力といったエアコンの性能・機能面に加え、ユーザーの安心につながるサービス力も当社の強みだ。協力業者を増やすなどして、エアコンの修理受付から訪問、修理完了までの日数を短くするなど、販売店からも対応力について評価をいただいている。

 コロナ禍が明けてイベントが増える中、今後は、暖房能力を体験してもらうような体感イベントの実施も検討していきたい。