2024.01.06 一部工場で稼働に遅れ 能登半島地震で電子部品など各社 安否確認と再開準備に全力

 能登半島地震の被災地域に工場を立地する電子部品・材料メーカーでは、一部の工場で年明け後の稼働開始時期を遅らせる動きとなっているが、安全面に十分に配慮しつつ、本社や近県からも応援チームを送り込むなど、生産再開に向けた準備を精力的に進めている。

 東芝デバイス&ストレージグループは、地震発生直後に本社(川崎市)に災害対策本部を立ち上げ、情報収集と対応・対策にあたっている。

 5日夕までのまとめでは、加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市、半導体生産拠点)では、派遣社員を含む従業員については、全員の無事を確認。建物については、操業再開に支障を及ぼすような破損がないことを確認した。

 ただ、クリーンルームの排気配管が広範囲にわたり破損しており、その修復に最優先で取り組んでいる。並行して、引き続き製造装置の状況確認を急いでいる。

 こうしたことから、一部の生産工程については10日の操業再開を目指して復旧を進めている。

 また、サンケン電気も5日夜までのまとめを発表した。安否確認を最優先するとともに、一部設備の破損や停電対応などを進めている。本社や他地域の拠点から復旧支援チームを派遣して活動。6日から更に支援チームを増員して被害確認を進め、 早期復旧に向け対応している。

 同社のグループ、石川サンケンの生産拠点(堀松工場、志賀工場、能登工場)では、従業員の安否確認を進めているが、まだ全員の安全が確認できていない。通信インフラが改善していない地区があり、引き続き最優先で確認をしている。自宅の損壊などで避難している従業員も多数おり、生活物資を支援している。

 工場被害については、建物の倒壊はないが、地震の規模が大きかったことを勘案し、一部の建物に対し専門家による安全確認を行う。

 また生産設備については、影響の有無を確認中。一部設備では修復が必要な箇所も判明している。さらに、電気の供給では、志賀工場が停電状態で、電力会社と復旧に向けて協議している。同工場の被害確認には一定の時間を要する見込み。なお、堀松工場・能登工場での電気供給は問題がないという。

 KOAのグループ会社である鹿島興亜電工の中能登工場(石川県中能登町)は、建物の損壊等はないが、5日時点で、水道水・道路・燃料等インフラの回復と並行して、設備復旧に向けて準備を進めている。

 日本ゼオンは、グループ企業を含め人的被害はないが、氷見二上工場(富山県氷見市・高岡市)で設備点検のため、全ライン停止中。高岡工場(富山県高岡市)は設備点検のため、全プラント停止中。ゼオンメディカル高岡工場(高岡市)は、設備点検後、9日から操業再開予定。

 今回、新潟県でも最大震度6弱を記録したが、同県内の工場では操業への影響はほとんどみられないようだ。TDKは、グループ会社を含む全拠点で特に大きな影響はなく、TDKラムダの長岡テクニカルセンター(新潟県長岡市)は当初からの予定通り、9日から年始の稼働開始を予定する。

 ●支援も

 一方、パナソニックをはじめ家電関連などの各社は、被害を受けた製品に対する特別修理対応を発表している。

 また、支援の動きも相次ぎ、地元ゆかりの企業の取り組みもある。加賀電子は義援金1000万円の寄付と、支援物資(レトルト食品1万2千食)の寄付を決めたと発表した。同社にとり、創業者・会長の出身地である石川とは縁が深く、これまでもイベント協賛や企業版ふるさと納税で協力。創業初期から金沢市内に営業所を構えて北陸3県の地場製造業向けに電子部品の販売を展開するなど、結びつきが深い。会長個人として地元企業の経営再建への協力や自治体への支援なども進めてきた経緯もある。