2024.01.10 【電子部品総合特集】ハイテクフォーカス ニチコン
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解
コンデンサの最新技術動向
■はじめに
近年、自動車・車載関連分野においては、「CASE」をキーワードとして、カーエレクトロニクス技術が大きく進化・発展してきている。具体的にはカーボンニュートラルを目指してパワートレインのxEV化、EPS(電動パワーステアリング)、EOP(電動オイルポンプ)、EWP(電動ウォーターポンプ)といった各種電装化ユニットの搭載による省燃費化技術の普及、また、ADAS/自動運転システムのさらなる高度化、通信機やセンサーの搭載といった自動車の高機能化に向けた動きも加速している。このようにxEV化、電動化、高機能化の進展によって、自動車1台当たりの電子部品搭載点数は増加傾向にあるため、今後、自動車生産台数以上の伸び率で電子部品需要の拡大が見込まれている。二輪のEV化も進んでおり、このような四輪自動車以外のモビリティの電動化も電子部品需要増加につながっていく。
車載用途のアルミ電解コンデンサには、小形・大容量化、高温度・長寿命化、低ESR化、高リプル電流化といった性能向上に対する強いニーズがある。このようなニーズは車載用途以外の5G基地局などの情報通信機器においても共通しており、さまざまな機器におけるトレンドと捉えている。当社はこれら成長市場に対する技術開発を重点的に進めており、特に需要が拡大している導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの最新技術動向を紹介する。
■今後の展望
車載機器、情報通信機器、産業機器は今後の成長が見込まれる市場であるとともに、アルミ電解コンデンサが機器設計におけるキーパーツの一つとされており、ここで述べた導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサに代表される高性能アルミ電解コンデンサに対する技術ニーズ、需要は今後も急速に拡大すると予測している。
とりわけ車載機器は、車載電装システムの進展に伴い、2035年には世界市場規模が59兆円(富士キメラ総研)にまで達するとの予測がなされており、特に成長が期待される市場と考える。
「ADAS/自動運転システム」や「ドライバーモニタリングシステム」といった先端システムは今後さらに高度化し、データ処理量増大によって、アルミ電解コンデンサに対してさらなる大容量化、低ESR化といった高性能化要求が高まることを予想している。また、車載機器以外でのニーズとして、情報通信分野や産業機器分野においてはメンテナンスフリー化を目指す動きも強まっている。こういった高性能化、高信頼化といったお客さまのニーズに迅速に応え、最適なアルミ電解コンデンサを提供ができるよう開発を進めていく。〈筆者=ニチコン〉
■導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサのラインアップ拡充
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、導電性高分子と電解液の2種類の電解質を採用している。電解液に対して約1万倍の電導度を有する導電性高分子(PEDOT/PSSが一般的に用いられる)を併用することで、電解液のみのアルミ電解コンデンサに比べて製品ESR(等価直列抵抗:Equivalent Series Resistance)を大幅に低減、リプル電流負荷によるワット損失(W=I2R W‥発熱 I‥リプル電流R‥製品抵抗〈ESR〉)が小さくなり、製品自己発熱を低下させて長寿命化が期待できる、あるいは許容リプル電流アップによってより高付加のアプリケーションに対応することが可能になる。このように導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、従来のアルミ電解コンデンサと比べて大幅な低ESR化、高リプル電流化、長寿命化といった点で優位性がある。
導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサに採用する電解液は、誘電体(アルミ酸化皮膜)の修復性、低蒸散性といった一般的な条件のほか、高温環境下における導電性高分子との反応性などをポイントに開発している。この専用電解液の特性によって、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサに比べて漏れ電流が低く、高温環境化で長時間使用しても電気的性能が維持できる高信頼性能を実現している。
当社の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサのラインアップは、125度4000時間保証のGYAシリーズを標準品とし、小型・高容量化ニーズに対してGYAシリーズから1ランク高容量化したGYEシリーズ、2ランク高容量化したGYFシリーズ【写真1】、長寿命化ニーズには105度1万時間保証のGYBシリーズ、高温度化ニーズには135度4000時間保証のGYCシリーズ、150度1000時間保証のGYDシリーズをラインアップしている。各シリーズのラインアップは【表1】の通りである。
今期、GYE・GYFシリーズに16V、50V、63V定格を追加し、GYEシリーズはφ10×12.5Lサイズの拡充を実施した。16~63Vまで拡充したことで顧客のアプリケーションに対してより適切な提案が可能となる。
加えて、GYEシリーズはφ10×12.5Lサイズの追加により、同シリーズφ10×10LサイズおよびGYAシリーズφ10×12.5Lと比較し、最大1.5倍程度の高リプル化が可能となる。