2024.01.10 【電子部品総合特集】自動車用電子部品の動向

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー

電子部品メーカー各社、次世代自動車向け事業を強化

 電子部品メーカー各社は、2024年に向け、次世代の自動車開発に向けた技術開発や営業・マーケティングを一段と強化する。自動車の電動化シフトやADAS/自動運転技術の高度化は、車載用電子部品市場の成長を加速させていく。各社は、自動車の技術進化に照準を合わせ、次世代ニーズを先取りしたR&Dとグローバルでのデザインイン活動に努めることで、今後も車載ビジネスの中長期の拡大を目指す。

 自動車市場は、電子部品・デバイス産業の成長を支える最重要市場の一つだ。

 自動車の世界生産台数は、乗用車と商用車を合わせ、10年代後半には年間9500万台前後まで拡大した。

 20年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う消費低迷や企業活動の停滞により、自動車世界生産台数は7600万台から7700万台程度まで急落した。

 21年も世界的な半導体不足などが響き急速な回復には至らず、22年は自動車メーカー各社の挽回生産が計画されたものの、半導体不足の長期化や上海地区のロックダウンなどの影響で各社の減産発表が相次ぎ、期待した生産台数の伸びには至らなかった。

 23年は、ようやく半導体の調達難が緩和され、日本や北米を中心に自動車各社の挽回生産が進展した。

 一方、中国での電気自動車(EV)を除く自動車生産は低調に推移したが、23年トータルでの自動車世界生産台数は、当初の予想をやや上回り、9000万台近い水準まで到達する見込みとなる。

 23年の10月から11月にかけ、米国UAW(全米自動車労働組合)によるストライキ長期化が自動車生産に影響を与えたが、24年春に向けて挽回が進む見通しだ。

市場の大変革期へ

 現在の自動車市場は「CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアード&サービス、エレクトリック)」や「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」などをメガトレンドする大変革期を迎えている。

 特に「電動化」は、世界的な「脱炭素/カーボンニュートラル」の潮流の中で、20年以降、各国政府が相次ぎCO₂排出規制方針や将来のカーボンニュートラル目標などを公表しており、これに合わせ、自動車のxEVシフトの動きが加速している。

 中でも、環境先進地域では、35年ごろまでのガソリン車やディーゼル車の新車販売禁止が打ち出されている。EUでは、合成燃料「e-fuel」を使用するガソリン車の取り扱いなども議論されているが、環境対応車へのシフトの動きに変化はない。CASEは、今後のモビリティー市場の変革をけん引するメガトレンドとなりうる。

 中でも電動化は、自動車市場変革における最大のキーワード。24年に向けても、自動車の電動化シフトは一段と加速する見通しで、24年から25年にかけて、主要な車載バッテリーメーカーの大型工場稼働なども、xEⅤ生産拡大を後押しする。

 ADAS/自動運転技術の高度化も一段と進み、自動運転システムの制御系部品やセーフティー関連の部品需要を押し上げる。

 これらの車の高機能化に伴い、自動車1台当たりの電子部品搭載点数は今後も増加し、車載用電子部品の世界需要は今後も中期で年率2桁ペースの成長継続が見込まれている。各社は、今後もCASEに照準を合わせた中長期視点の技術開発を進めることで、車載ビジネスの飛躍的な拡大を目指す。

アプリケーション別の部品動向

電動車用部品

(電動車用)導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー

 EVやプラグインハイブリッド車(PHⅤ)、燃料電池自動車(FCV)などのxEVでは、モーターを駆動するために、インバーターやDC-DCコンバーター、車載充電器、電池システムといった主要構成ユニットにいろいろな電子部品が使用される。

 インバーターやコンバーターは小型で高効率が求められ、高電圧で駆動するパワーデバイスが欠かせない。通常のIGBTはシリコンベースのウエハーを使用するが、最近はSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの新たなウエハーを用いた高効率なパワーデバイス開発が活発化している。

 こうした動きに伴い、コンデンサーや抵抗器、トランス/コイルなどの周辺部品では、高周波スイッチング、高電圧化に対応した新製品開発に弾みがついている。コンデンサーは、小型、大容量、長寿命、低ESRなどの特性向上が追求され、抵抗器は小型で高電圧、大電力、低抵抗化などが追求されている。トランスやコイルは、小型で低損失、高効率化などに向けた技術開発が進展している。

 車載充電器は、小型で高速充電などが要求され、小型で大容量のアルミ電解コンデンサーなどの新製品開発が活発化している。

 同時にxEV開発では、1充電当たりの走行距離向上に向け、電子部品の軽量化に向けた技術開発にも力が注がれている。

 EV急速充電用コネクターは、グローバルの各地域ごとに異なる充電規格が林立する中で、コネクター各社は、各種仕様に対応した製品ラインアップの拡充に注力している。

ADAS/自動運転関連部品

(自動運転用)自動運転コントロールユニット

 自動運転の実現には、車外通信性能の高度化や高精度な物体認識、高度な車両制御、AI(人工知能)やエッジコンピューティングを含む情報処理技術など、さまざまなテクノロジーの融合が必要。搭載部品への信頼性も極めて高い。

 電子部品各社は、これらを実現するための要素として、各種センサーや制御デバイス、通信モジュール、ノイズ対策用部品、撮像系部品、大容量高速伝送用部品などの開発を活発化させている。

 ADAS/自動運転向けのセンサーヒュージョンでは、高画素センシングカメラやミリ波レーダー、LiDAR(ライダー)、赤外線センサーなどの開発が活発だ。

 走行中の車の周辺情報を高精度に認識するため、近距離検知、中距離検知、長距離検知など、目的に合わせてさまざまな車載用センサーが開発されている。

 自動運転レベル3以上で必須とされるLiDARは、既存の機械式に加え、ソリッドステート式LiDARの開発も進んでいる。

 車載カメラは、従来のバックモニター用カメラから、車載センシングカメラへと進化し、高画素化と伝送速度向上のためのデジタル伝送化が進んでいる。最近の車載カメラは、1メガピクセルへの移行が進展し、今後はさらに2メガ/3メガクラスへの移行も進む見通しだ。

 統合ECUのHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)シフトに照準を合わせた高周波デバイスや放熱デバイス、ノイズ対策部品の技術開発も進む。

 さらに、将来の完全自動運転車での車室内のビジネスルーム化やリビングルーム化に照準を合わせた、車載用映像・音響機器向け部品の先行開発に力を入れるメーカーも増えている。

安全・快適系部品

(安全系)後退時車両直後確認装置向けカメラモジュール

 最近の新車開発では、差別化促進のため、乗員の安全性や快適性、利便性を高めるためのさまざまな機能付与が進んでいる。特に日米欧などのプレミアムカー開発では、これらの機能拡張が年々進み、車載用電子部品の新規需要を創出している。

 安全・快適系の電子部品用途は、パワーウインドーやヘッドランプ光軸調整、電動パワーシート、オートスライドドア、キーレスエントリーなど多岐にわたり、今後もいろいろな機能の標準搭載化と新たな機能の創出が見込まれている。

 センサーでは、車室内の温湿度を検知し、車載エアコン制御と連動させることで、乗員の快適性向上や燃費コントロールの最適化を実現するソリューションなどが提案されている。自動車ガラスの曇り止め用のデバイス開発も進む。車のドアやトランク、ボンネットなどの開閉検知に使用される防水検出スイッチは、冗長性確保のため、1個のスイッチで2回路の同期切り替えが可能な製品などが開発されている。

 最近は、座席シートにも姿勢制御用センサーなどが内蔵されるようになっている。乗員の快適性向上に寄与する車室内LED照明システム開発も活発だ。

 近年は車室内での幼児やペットの置き去りによる事故が世界的に社会問題化していることから、車室内監視用デバイスとしてミリ波レーダーや4Dイメージセンサーなどの提案も進められている。カメラではなくレーダーやRFを活用することで、外光の影響を受けない高精度モニタリングやプライバシーへの配慮などが図られている。

 自動走行レベル3以上の自動運転車では、走行中のドライバーの体調などを車自身が把握し、自動運転モードと手動モードに切り替えを随時行う必要がある。これらに対応するドライバー生体モニタリングシステム向けセンシングデバイスなどの開発にも力が注がれる。