2024.01.11 【ICT展望 2024】三菱電機 三谷英一郎常務執行役 インフォメーションシステム事業推進本部長

三菱電機の三谷常務

サステナビリティー経営に力

生成AIはハイブリッドで活用

 ―2023年の国内ICT市場をどう振り返りますか。

 三谷常務 コロナからの回復基調が継続した。前年度は、半導体など部材不足で、サーバーやネットワークなど通信機器のお客さまへの納入で苦労したが、こうした問題も解消して需要に応えられるようになった。引き続きDX(デジタルトランスフォーメーション)関連が拡大している。また、生成AIの登場は、あらゆる領域に影響を与えてくる。ルールを整備しながら特性を理解し、前向きに取り組む必要がある。

 ―23年度の業績の進捗、特に注力した分野をお願いします。

 三谷常務 当社およびITグループ各社の業績も増収基調で堅調に推移している。DX需要が引き続き堅調で、SAP納入事業の引き合いが増加した。また、セキュリティー対策の需要も伸びている。

 従来のITセキュリティーに加え、工場の生産ラインに関わるOTセキュリティーに大きく踏み込んだ。OTセキュリティーは、当社が強みとするセキュリティー技術や製造部門のノウハウを発揮できる分野で、FA部門と連携し、各工場のアセスメントなどで開始している。インダストリー・モビリティビジネスエリアと一体となって事業化に向けたプロジェクトをスタートさせた。

 また、セキュリティー監視などを行っているグループ会社の三菱電機インフォメーションネットワーク(MIND)のサイバーフュージョンセンターでもOTセキュリティーの取り組みを開始した。

 ―24年度にはどう取り組まれますか。

 三谷常務 当社は「循環型デジタル・エンジニアリング企業」を掲げ、サステナビリティー経営を打ち出している。各事業部が、世の中のサステナビリティーにどう貢献していくか取り組んでおり、引き続き大きなテーマだ。事業成長と社会課題の解決の両軸で取り組む。カーボンニュートラル実現に向け、CO₂の排出量や業態の見える化などに注力する。

 OTセキュリティーは、診断やコンサルまで含め、事業化に向けた取り組みを加速させる。

 データドリブン経営に向け、お客さまの要望も、従来のITシステムの構築だけでなく、広く高度になってきている。コンサル的なアプローチが求められる。当社グループは、世界トップクラスのデータアナリストとデータサイエンティストを抱えている。事業部の知見と対になり強化し、データドリブン経営に応えていく。

 生成AIについては、グループ会社も含め、社内業務での活用を開始している。今後は、社内の独自データとの組み合わせなどハイブリッドな取り組みを進め、積極攻勢をかける。また、IT・DX人材の育成やDXブランド力の向上などにも力を入れる。

 ―24年度のグループ会社の注力分野は。

クラウド事業を強化

 三谷常務 三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)は、引き続きSAP導入事業に注力する。スカイアーチネットワークスとの共同出資で、クラウドセントリックを設立している。トップレベルのクラウド技術集団として、クラウド事業の拡大を目指している。同社の3次元計測アプリ「ルーラレス」が、米の「CES 2024 イノベーション・アワード」を受賞した。MINDは、セキュリティー事業の一段の強化とともに、OTセキュリティーなど事業領域を図る。三菱電機ITソリューションズ(MDSOL)は、自社パッケージのSaaS化など、引き続きクラウド事業を強化していく。