2024.01.17 【ICT展望 2024】富士フイルムビジネスイノベーション 浜直樹社長・CEO

富士フイルムBIの浜社長

生成AIの新サービス提供
24年も環境がキーワード

 ―コロナの「5類」移行など事務機ビジネスの市場環境も好転してきたと思いますが、2023年をどう振り返られますか。

 浜社長 23年は、生成AI(人工知能)も出てきて、ビジネスが大きく変わってくることを予感させる一年だった。オフィスのあり方や働き方も変わり、ハイブリッドワークが定着。電子帳簿保存法(電帳法)、インボイス制度の導入もあり、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)も進展した。複合機の位置付けも、ソリューションサービスを実現するデバイスに大きく変化した。こうした流れは24年も続く。

 ―23年は、ソリューションサービス強化を大きく打ち出した年だったと思います。

 浜社長 当社は、27年にサービス&ソリューション売り上げ4000億円以上を計画している。23年は、これに向けての取り組みを実感できる年だった。成功事例を導入しやすいパッケージとして提供している「Bridge DX Library」は、ラインアップを146種類に拡充した。今後もラインアップを拡充していく。

 中小企業はIT人材が不足しており、セキュリティー対策やインフラなどの面で課題を抱えており、サポートが求められている。IT資産の可視化や運用、管理から環境改善までワンストップで行う「IT Expert Services」を6月末から提供開始した。さらにお客さまが現在利用しているシステムを最大限に生かし、業務変革を支援、DXを加速する新たなクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」の提供を11月から開始している。いずれも、非常に好評だ。24年も生成AIを使った新しいサービスなどを提供していく。

 ―ますます重要性が高まってきている環境面の取り組みはいかがですか。

 浜社長 環境への対応は、非常に重要だ。富士フイルムグループは、30年にCO₂排出量を19年比で50%削減する方針だが、当社も環境問題は、最重要課題として取り組んでいる。

 いわゆる中古機と違い、部品の再利用84%、新しい部品16%によるまったく新製品と同様の扱いとなる再生型複合機を出しているが、官公庁や企業への導入が進んでいる。分解しやすい設計など前々から取り組んできたが、環境面から評価が高まっている。

 欧州では早ければ26年からPFAS(有機フッ素化合物)を使用した製品への規制が検討されており、対応を検討している。

 東京の西新宿に国内オフィス拠点としては初めて、カーボンニュートラルを実現したオフィスを新設した。また、トナー生産で業界トップクラスの低温定着性能を実現するなど環境性能の高いSuper EA-Ecoトナーの増産を開始した。新トナーは外販を考えていく。24年も環境をキーワードに取り組んでいく。

 ―海外展開を本格化させる方針ですが。

 浜社長 ゼロックス社との資本関係がなくなり、全世界で販売できる体制となった。国ごとに特性が違うが、横展開できるものも多い。IT Expert Servicesは、アジア・オセアニア地域でも展開する。当社は、海外は後発だが、それだけに可能性は大きい。アフリカやインド、中南米などでも展開していく。商業印刷については、米国と欧州に拠点を設けており、富士フイルムの海外拠点も生かし、グローバル展開に力を入れる。