2024.01.24 化粧品大手が冒頭に登場 ラスベガスで開催のCES AI=ネット同様に

登壇したロレアルCEO

AIは実装段階にAIは実装段階に

 最新テックで近未来の社会を築く提案が活発に展開された「CES 2024」(米ラスベガス、9~12日)。主催者の目標を上回る13万5000人以上が約150の国・地域から来訪し、出展も4300以上とコロナ前の活況を取り戻した。この1年で急速に普及した生成AI(人工知能)が注目される中で迎えた今回、むしろAI実装は「標準」化。ハードとソフトの融合、ユースケースの展開が目立ち、個別の製品や技術だけでなく、エコシステムも生かして社会のインフラをめざすような訴求が見られた。

 多くの企業にとってAIは実装段階。韓国サムスン電子が、米テスラなどと連携するビジョンを打ち出したのが象徴的で、「AIはインターネットと同様、わざわざ言及する必要のないインフラになる」との声も聞かれた。

 初日の講演に化粧品大手の仏ロレアル。ニコラ・イエロニムスCEOらが登壇した。美容分野の企業が基調講演に登壇したのは初めてという。CES自体には約10年前から参加し、美容機器を中心に訴求してきたが、今回は美容テックともいえる分野をアピールした。

 「なぜ化粧品会社がテックなのか」。そう逆説的に問いかけたイエロニムス氏は、同社の歴史を振り返った。100年以上前、毛染めが流行したが、副作用を持つものなどもあり、安全な染毛剤開発が、1909年のロレアル起業のもとという。

 また、35年には日焼け止めを発明し、皮膚の保護に貢献してきた。その後も「80年代には、多くの年月の研究の結果、若手の生物学者が再構築された人間の皮膚を世界で初めて開発した。こうした成果を生かし、動物実験を35年前にやめることを可能にした。法律で義務付けられるよりも14年前のことだ」と指摘した。

 背景にはデータの蓄積などの強みがある。「私たちは独自の位置にある。美容に専念してきた100年以上の歴史の中で、肌の知識から製剤、あらゆる美容カテゴリー、消費者とのつながりまで、世界で最も豊富なデータベースを持っている。データプラットフォームには、10ペタバイトのデータを所有する」と明らかにした。

 そのうえで、対話型AIの新サービスなどを披露した。「生成AI美容アドバイザーともいえるもので、個々の肌診断に基づいて個別にパーソナライズされたアドバイスを提供し、スキンケア、メイクアップ、ヘアケアの製品を紹介する」とCEO自身が対話してデモを展開した。

 こうした新勢力に加えて、スタートアップも存在感を示した。新興勢を含めたこうしたシーズ探しには、テック大手もどん欲だ。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOをはじめ各社のトップらは、スタートアップのコーナーを含め自ら足を運んでいた。また韓国の大手ブースでも、幹部らが相互に訪問するのが慣例になっているという。

 日系勢も、パナソニックグループがコンセプトと共に技術や製品をアピールし、開発段階の素材も訴求するなどエコシステムを意識した訴求が相次いだ。

(25日付以降の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します。電波新聞デジタルに動画があります)