2024.02.03 世界を見据える日系スタートアップ CESで続々と 今後の動きに注目!

アロマジョインのブース

 毎年1月に米ラスベガスで開催する最大級のエレクトロニクス見本市「CES」。スタートアップ向けエリアは、毎年規模を拡大し、注目を集めている。その多くは、とがった技術を披露することでパートナーや出資者を募り、さらに成長して、再び出展するという好循環を目指す。

 韓国勢が数の上でも大きな存在感を示す中、日本勢も注目されている。

 日本貿易振興機構(JETRO)は今回も、日系スタートアップ企業を集めたパビリオンを作り、30社が出展。大阪商工会議所とクリエイティブ・ヴィジョンが主催する「Japan TECH」も、生活の質を向上させる出品が目白押しだった。

◆匂いを操る

 情報通信研究機構(NICT)発ベンチャーのアロマジョイン(京都市伏見区)は、映像や音響と連動して香りを制御する「アロマシューター」を活用した製品を開発している。いわば香りのデジタル化だ。

 出品したうちの一つ、首掛けタイプの「Aroma Shooter Wearable3」はXR体験を向上させる設計。五感の一つである嗅覚への作用で、エンターテインメントや医療現場など、幅広い場面での活用が期待されている。

◆“レンジ"がバッグに

備えない防災として日常使いできる(WILLTEX)

 初出展のWILLTEX(横浜市中区)は、三機コンシス(東京都江戸川区)の繊維自体が発熱する特許技術を活用して作ったファブリック製品「WILLCOOK」などを出品し、アワードを受賞した。同製品はカバン型のポータブルレンジバッグで、5分で80度に達する。バッテリーから電力を供給。ヒーターも電線も布でできているが発熱する。

 特別な「備え」ではないふだん使いの防災グッズにできるのも特徴だ。担当者は「例えば、離乳食などを公園で温められる。液体缶ミルクにも使える」と話す。自社ECサイトやビックカメラ有楽町店(東京都千代田区)などで販売しており、海外展開にも意欲的だ。

◆距離の隔たり無くす

 toraru(神戸市中央区)は、分身サービス「GENCHI」を出品。遠隔地のロボットや人、ドローンをアバターのように画面越しに動かすことで、まるでその場にいるかのような体験を提供する。今後は、通信、嗅覚、味覚などで協業していきたい考えだ。

◆次世代の断熱材

 物質・材料研究機構(NIMS)発スタートアップのサーマリティカ(茨城県つくば市)は、「常識を覆す」断熱材を手掛け、水素をはじめ液化エネルギー源の低コスト保存に最適と訴求する。2次電池セルの延焼阻止材や、ウレタンの熱伝導率低減剤としても強い引き合いがあるという。開幕直前のイベントでは、審査員から高い評価を受けていた。
(5日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)