2024.02.24 TSMCが熊本で開所式、政府も大型支援へ 半導体で日台連携

記念撮影に収まる斎藤経産相(中央)や劉会長(その左)、経産省幹部ら(代表撮影)

 台湾TSMCが、熊本県菊陽町で建設を進めてきた第1工場が完成し、現地で24日、開所式があった。TSMCとして日本初の生産拠点。第2工場への最大7320億円の政府支援も同日、表明された。第3工場も想定されている。台湾一極集中を避けての海外生産が本格化することになる。

 開所式には、TSMCのカリスマ創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏や、劉徳音(マーク・リュウ)会長、魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOがそろい踏みし、新工場を重視する姿勢を改めて示した。

 運営会社に出資するソニーグループの吉田憲一郎代表執行役会長CEOや、デンソーの林新之助社長、斎藤健経済産業相や蒲島郁夫知事、吉本孝寿町長らも顔をそろえた。

 さらに台湾の国家発展委員会からも、龔明鑫主任委員(閣僚級)の同社取締役としての出席があらかじめ発表されるなど、日本・台湾の連携の象徴としてのアピールともなった。

 斎藤経産相はTSMC幹部や蒲島知事らと相次いで会談。劉会長との会談では、先端半導体の安定供給への期待や、九州などへの経済波及効果への期待を改めて表明。劉氏は日本政府や地元への謝意を示した。

誘致競争の中

 同社が、米トランプ政権の誘致を踏まえてアリゾナ進出を表明したのは20年5月。相前後する時期から日本とも交渉を重ね、21年11月に熊本進出が表明された。

 同社はその後、ドイツ進出を明らかにしたが、その際もボッシュなど欧州の有力企業との合弁で進めている。単独を避け、地元勢を引き付けつつ、また公的支援を呼び込むしたたかな戦略も垣間見える。第2工場についても、政府からの支援を織り込んで年内の着工を見込んでいる。

 誘致競争では米国への進出が先に決められたとはいえ、日本立地には、ソニーグループ、車載など需要が見込めることや、地政学リスクの低さなどの背景もある。また日本側には、先端技術を取り込みつつ、装置や材料などの裾野を広げ、地産地消に近い形にすることで経済安保につながる期待もある。その意味で、ウィンウィンともいえそうだ。

開所式の開かれたTSMCの拠点

 第1工場は約1兆3000億円で計画され、政府が最大4760億円の支援を表明。22年4月に着工され、以来、建設を急ぎ、建屋は23年末に完成し、2年弱で開所にこぎつけ、「順調に進んだ」(アナリスト)と評された。第1工場のクリーンルーム約4万5000平方メートルは国内最大級になる。年内には量産を開始する予定。

 むろん、波及効果への期待も大きい。第1工場は、2030年に現地調達率60%(製造装置を除く)が目標とされる。九州経済調査会は昨年末、TSMC進出などに伴う経済波及効果(九州7県と、山口・沖縄県)は10年間で約20兆円との試算を発表している。

 TSMC側も「パートナー・地域とともに、半導体に対する世界的に旺盛な需要に対応しながら、グローバルな半導体エコシステムの成長に貢献する。また、九州・日本が世界有数の半導体生産地として発展することに寄与する」(JASM)としている。
 (23日、26日の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報しています)