2024.03.05 三菱が情報技術のR&D拠点を公開 AI技術や宇宙空間観測

宇宙空間観測の施設

 三菱電機は2月末、「情報技術総合研究所」(神奈川県鎌倉市)を報道陣に公開した。最先端の情報通信技術で「想像を超える未来をかたちに」と掲げ、AI(人工知能)やセキュリティー、デジタルツインなどに取り組んでいる。2023年度の省エネ大賞も受賞したZEB関連技術実証棟「SUSTIE(サスティエ)」の取り組みも説明。AI・量子関連の取り組みや方針を明らかにしたほか、宇宙空間観測所を初公開した。中国やロシアの衛星も「結果的に追尾・観測範囲に入ってくるので、対象になることもあります」という。

 同研究所は、多彩な研究開発に取り組んでいる。身近なところでは、3G携帯に採用されている暗号や、運行情報などをリアルタイムで旅客列車内で知らせる映像情報システム「トレインビジョン」、気象衛星「ひまわり」の宇宙事業など。最近では月着陸を実現した「SLIM]のシステム開発・製造や運用支援も手掛けてきた。

 注力分野の一つはAI。同社の旗艦であるAI技術「Maisart(マイサート)」は、機器・エッジをスマート化。演算量を削減し、機器の知見を活用しての効率化にも貢献している。

 その一つが、量子コンピューティングによる高速な最適化技術。従来コンピューターの100倍以上の高速化を確認。これを生かし、工場や交通などにAIを適用し、最適化問題に取り組んでいる。

 報道公開では最近の事例として、自動倉庫の在庫配置最適化や航空管制関連を訴求した。航空管制では、年初の羽田空港事故もあり航空管制に改めて注目が集まる中、離発着順序の効率化を最適化技術で支援。100倍以上の高速化を通じ、離発着時間を26%減らすことなどにつなげている。

 約2年前に開設され、初公開されたのは「大船宇宙空間観測所」。

 宇宙空間の商用利用が活発化し、人工衛星やデブリ(ごみ)が増える中、軌道の安全確保や、宇宙空間の持続的・安定的活用が求められている。同観測所は①こうした軌道上の観測技術の開発②宇宙空間の大容量通信の実現に資する、衛星―地上間の光通信技術開発を掲げている。

 SLIMや国際宇宙ステーション(ISS)の追尾観測の模様も紹介した。特にSLIMでは、静止軌道より遠方の宇宙機の追尾・観測に成功した。

 「望遠鏡や衛星なども手掛けているグループの知見も強み」と、同研究所の遠藤貴雄主席技師長。今後、NTTの進めるIOWN(アイオン)のような光通信を含め貢献することが期待されそうだ

(6日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)