2024.03.22 【九州・山口産業特集】長府工産 新工場建設や営業強化で人員採用

伊奈 社長

 長府工産(山口県下関市)は、売り上げ伸長を背景に、人員、設備ともに積極的な投資を図っている。

 今年度は新規得意先が約680件と、昨年度の600件よりさらに上積みできた。利益面ではこの1年間で工場の稼働率が上がり、工場単体の赤字がほとんどなくなったことも奏功し、2024年3月の決算では過去最高の売り上げ400億円を見込む。

 新年度には敷地内で塗装工場の新設を決定。設備投資としては5億円超の見込みで、完工は今年の年末くらいを想定している。

 大阪では3月19日、支社を摂津市に新設した自社ビルに移転。旧社屋は賃貸で古く、耐震性にも不安があったためで、新社屋は新大阪駅にも近くなり、屋上には太陽光発電システムを搭載。つくった電気を給電できるようにV2Hを設置し、社用車のうち1台はリーフを配備している。

 下関市の社屋では、顧客向けに停電をわざと起こし、充放電ができる実証を行うことも。販売店へ、電気が実際にどういう動きをするのかという説明にも活用している。

 自社のオリジナルブランドのトライブリッド蓄電システム「LiB Tower Plus」も伸長を続けている。躍進の要因の一つに、関東方面など市場の大きい地域での売り上げ伸長が挙げられ、東京都の「クール・ネット東京」が取り組む補助金は追い風になっている。拠点では横浜のシェアが大きく、首都圏に向けた営業強化で人員採用を考慮している。

 2月の役員会で今年の昇給は去年の4・35%を上回るベースアップを決定した。営業利益の1割を原資に充てる3月の期末決算賞与も、3.5カ月から3.8カ月ぐらいが想定され、通常の夏冬の賞与よりも多くなる見込みだ。

 今後も電気自動車(EV)の台数は伸長が見込まれ、太陽光より蓄電池の方が増えるのではという予測もある。太陽光発電システムを主軸とした創エネ・蓄エネ市場の拡大に合わせ、人材採用にはさらに力を入れていく。

 4月からは井村隆専務が社長に就任、伊奈紀道社長は会長に勇退することから、メディアへの積極的な露出も視野に入れている。