2024.04.05 【やさしい業界知識】情報サービス産業

ICT投資が引き続き拡大
DXけん引、提案力強化

コロナ禍でも成長

 企業や官公庁などの情報システムの構築や運用を担う国内の情報サービス産業は、情報技術を駆使してイノベーションを支えている。コロナ禍で市場環境が変化する中でも堅調に成長。生成AI(人工知能)の登場を追い風に、デジタル技術を業務改善や新規ビジネスの創出につなげるデジタルトランスフォーメーション(DX)のけん引役として市場は拡大を続けている。

 情報サービス産業の企業は、企業の情報システムの構築を行うソフトウエア開発やシステムインテグレーション(SI=システム構築)、システムの運用を請け負うアウトソーシング、データセンター(DC)を活用したサービス、インターネット関連サービスなどを手掛ける。

 ソフトやハードを提供するベンダーやSIにとどまらず、顧客に寄り添いながら業務全体の変革を提案するコンサルティングの役割も追求するようになっている。

 背景にあるのは、情報通信技術(ICT)市場の拡大だ。総務省がまとめた2023年版「情報通信白書」によると、スマートフォンやクラウドサービスの普及などによりICT市場規模(支出額)は22年に27.2兆円(前年比5.2%増)情報通信産業の21年名目GDP(国内総生産)は52.7兆円に上り、全産業の約1割を占めている。

 一般的に国内の情報サービス企業の多くはサーバーやストレージ(外部記憶装置)、ネットワーク、パソコンといったハード機器上に、実務で必要となるソフトを組み込んだ情報システムを構築し運用を行っている。

 サーバーやネットワークなどのハードは、富士通やNEC、日立製作所をはじめ、海外メーカーでは日本ヒューレット・パッカードやデル・テクノロジーズ、シスコシステムズなどが提供。レノボやファーウェイ(華為技術)など中国メーカーも台頭している。ハード機器を組み合わせ、国内のSI企業が製造や流通、サービスなどの企業や官公庁の要求に合わせシステムを構築し、運用などを支援している。

 これまでは企業などの要求に合わせ、プログラムを一から書く受託開発が一般的だったが、昨今はパッケージ化されたソフトを使ったシステム構築が主流だ。

 最近はインターネット経由で業務システムを必要なときに必要なだけ利用するクラウドコンピューティングを採用し、環境の変化に対応したシステム開発も進む。

DC開設が活発

 クラウドのサービスはグーグルやアマゾン・ドットコム、マイクロソフトといった海外企業のほか、日系企業もクラウドを活用したサービス支援を強化。国内外メーカーが日本国内にDCを開設する動きも活発化している。

 全ての機器をネットワークでつなぐ「IoT(インターネット・オブ・シングス)」の導入も進み、さまざまなシステムから得られた大量のデータを収集し、分析していくビジネスに生かすデータドリブン(駆動型)経営も加速している。22年の登場以降、急速に拡大する生成AIはインターネット以来の発明ともいわれ、技術革新はまさに日進月歩で進んでいる。

 IT専調査会社のIDC Japanによると、22~27年の国内ITインフラ市場は年間平均成長率8.4%、27年の売上額を7兆6643億円と予測している。

(毎週金曜日掲載)