2024.04.24 生成AIで「考え」引き出すカウンセリング TISが新チャット機能を実証開始

「ふう」の画面イメージ。「田舎のおばあちゃん家のネコ」をモチーフとしたキャラクターを採用

 TISインテックグループのTISは、ユーザーの発言に共感して日々の悩みや不安の軽減につなげるAI(人工知能)チャット「ふう」の実証実験を始めた。生成AI搭載のチャットボットとの会話を通じて「答え」を教えてくれる対話ではなく、自らの内面に抱える「考え」を引き出すことで、穏やかな気持ちをもたらすメンタルヘルスケアを支援する。

 「ふう」は身近な人には話しづらい悩みや不安を募らせているユーザーが、AIチャットに会話を入力すると、共感的な反応と問いかけを行うサービス。基盤の対話機能には、生成AI搭載のクラウド型業務チャットボット「Dialog Play」を活用し、TIS独自のAIデータベースを使ったユーザー発言内容の判定のほか、指示コマンドの自由な組み合わせによって生成AIだけでは難しかった細かな言い回しも調整できるようにした。

 メンタルヘルス関連アプリでは、精神疾患の原因となっている行動を修正する認知行動療法が一般的。一方、「ふう」は、経験を理解・尊重し、受け入れることを重視する「クライエント中心療法」と呼ばれるカウンセリングの傾聴技法を用い、自己洞察を促す会話を行う。質問を待つのではなく、うなずきや共感、要約、問いかけによって話題を提供するのが特徴だ。

 「田舎のおばあちゃん家のネコ」をモチーフとした親しみやすいキャラクターを採用。いつでも否定せずに聞いてもらえる相手がいることで慢性的な不安感の軽減や、会話を通した思考の切り替え、言葉にしづらい感情や不安の言語化による思考の整理といった効果を見込んでいる。

 実証実験は4月から3カ月程度行い、身近な人には話しづらい悩みや不安を募らせている個人を対象に、ふうを利用できる無料チケットを配布する。期間中は定期的にアンケートを行い、継続して利用してもらえるかなど検証した上で正式なサービス提供を目指す。

 TISは23年8月、20~50代の男女800人を対象に共感AIチャットの利用について尋ねたところ、約56%が共感AIチャットを利用したいと答えた。ソーシャルイノベーション事業部インキュベーションセンターの田口友美恵氏は「ほかの生成AIのように答えを教えてくれる対話ではなく、自らの内に抱える考えを引き出す対話を重ねることで、日常生活での漠然とした不安感の軽減につなげたい。誰かに話を聞いてもらいたい人に寄り添うAIを提供し、自身の力で穏やかな気持ちを取り戻せるサービスにしたい」と話す。  

 今回は会話のみの検証だが、今後は自身で気持ちを整えるための追加機能も実装したい考え。