2024.04.27 EV時代の「はんだ」 脱炭素にも貢献する合金とは
プリント基板では、はんだで電子部品を電気的に接続している
家電や電気自動車(EV)などに搭載されるプリント回路基板上で、電子部品を固定して電気的に接続するはんだ。このはんだが、脱炭素の実現にとっても重要な役割を果たしているのをご存じでしょうか。電子機器のつなぎ役を担うこの小さな合金について、「はんだ付けって面白そう!」と無邪気にはしゃぐ新入社員に、はんだ業界に詳しい記者がその重要性を説明しました。
新入社員 はんだは、電子機器に使われていると聞きましたが、一体どのようなものなのでしょうか。
記者 はんだは合金の一種で、スズなどを主成分としています。電子機器の中で、ICチップやコンデンサーなどの電子部品をプリント基板に固定し、電気的につなぐ役割を果たす重要な材料です。
新入社員 そうだったのですね。ところで、合金ってどういう意味ですか。
記者 合金とは、2種類以上の金属を融合させたものを言います。日本でははんだの合成組成をスズ、銀、銅とし、銀の含有率が3%という業界基準が電子情報技術産業協会(JEITA)によって推奨されています。合金材料の比率を変えることで、はんだの接合強度を高めたり、溶ける温度を下げたりできます。
新入社員 材料の組み合わせで色々と変わるんですね。はんだでも環境に配慮した材料が使われるようになっているのでしょうか。
記者 はんだはかつて、スズ、銅、鉛が主流でした。でも、今では環境に配慮して鉛を使わなくなっています。代わりに使っているのが銀です。銀を含有してスズと銅を融合した「鉛フリー」はんだが広く普及しています。
新入社員 はんだのようなちょっとした材料でも環境を意識した取り組みが進んでいるんですね。
記者 脱炭素を目指す取り組みは、規模の大小を問わずどの企業にとっても大きな命題ですからね。
ただ、はんだ材料のコストは銀が半分を占めます。銀が高騰したことで、コストダウンのために含有量を3%から1%まで減らす「低銀化」が進み、最近では銀を一切使わない「銀レス」はんだも開発されています。
スマートフォンやEVなど製品が多様化していることもあり、用途に合わせてインジウムやコバルト、アンチモン、ゲルマニウムなど新しい材料を添加したはんだも登場しています。
新入社員 技術開発のトレンドはありますか。
記者 スマホに搭載される電子部品の小型化が進んでおり、「0201サイズ」と呼ばれる0.25×0.125ミリメートルの大きさのコンデンサーや抵抗器などが登場しています。0.5ミリメートルのシャープペンシルの芯の上に乗ってしまうようなサイズです。電子部品の超小型化で、はんだ粉末も、一般に使用されている30マイクロメートルではなく、10マイクロメートルの極微細粉を使用したペースト状が製品化されています。
当然、環境負荷低減に向けた技術開発も進んでいます。その1つが低温はんだ(低融点はんだ)です。
低温はんだは、読んで字のごとく従来よりも低温で溶けるのが特徴です。融点が低ければ、はんだ付けの際に電力消費量を減らしたり、実装工程を簡略化したりすることができます。一般的にはビスマス、インジウム、カドミウムなどを含有することではんだの融点は183度未満に下がります。鉛フリーはんだは融点が高く、低温化が求められていることもあり、脱炭素の観点からも低温はんだに注目が集まっているのです。