2024.05.23 ソニーG、三菱が売り上げ過去最高 パナHDと富士通は最高益 成長領域がけん引 電機大手決算
電機大手8社の24年3月期連結業績
総合電機各社の2024年3月期連結決算は、成長領域の事業が順調に推移し、ソニーグループと三菱電機が売り上げで過去最高を更新した。パナソニックホールディングス(HD)と富士通も最高益を記録。25年3月期は、環境適応力のある経営基盤づくりと成長領域をさらに伸ばす施策の両面を断行し、各社とも収益の拡大を狙う。
三菱は、FAシステムが苦戦したものの、社会システムや電力などが伸び、半導体不足などの回復から自動車機器も大幅に改善。漆間啓社長CEOは「収益性と効率性の改善に向けた努力が効果をあげつつある」と手応えを示した。
ソニーGは、市況変動の影響で売り上げが倍増したソニー生命や、ゲーム、音楽、イメージセンサーなどが好調。一方、営業利益はイメージセンサーの減価償却などがあり減益だった。25年10月に金融子会社の上場を目指していることから、金融以外の業績も開示し、増収増益であることを強調した。
パナソニックHDは、くらし関連やインダストリー(産業向け)、電池関連が苦戦したが、自動車向けのオートモーティブやICT(情報通信技術)関連のコネクトが伸び全体を押し上げた。営業利益はインダストリーが市況悪化などで減益だったほかは増益。
グループ会社再編の影響で大幅な減収となった日立製作所だが、成長領域として捉えるデジタル、エネルギーや鉄道、社会インフラなどの主要3セクターの売上は12%増で利益も伸びた。加藤知巳執行役専務CFOは「ルマーダが収益性向上に貢献している」と説明する。
情報通信系の富士通とNECは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗りSI(システム構築)やサービス関連を順調に伸ばしたが利益面では明暗を分けた。
富士通はモバイルや光関連のネットワークが落ち込んだほか、半導体などのデバイスが低迷。一方、NECは、テレコム関連が苦戦したものの国内企業や官公庁のSIやサービスを伸ばし大幅な増益だった。
シャープは、オフィス関連事業が好調だったほかは苦戦を強いられた。テレビなどは構造改革の効果を出したが、デバイス事業は低迷が続き、全体では2期連続の赤字。
上場廃止後初めての決算となった東芝は、売上高が2%減だったが営業損益は399億円の黒字となった。引当金などを考慮する前の営業利益率は「発電システムや送変電・配電、公共インフラが好調に推移した」(池谷光司副社長)。
25年3月期は、各社とも収益性の高い事業へリソース(資源)を集中させる方針だ。
ソニーは新中期経営計画をスタートし、「利益ベースでの成長をより重視する」(十時裕樹社長COO兼CFO)と強調。中計最終となる日立はGX(グリーントランスフォーメ―ション)とDXを軸に成長を目指す。AI(人工知能)やサービスに注力するとともに収益性の高い事業を強化し「キャッシュをさらに創出していく」(小島啓二社長兼CEO)。
パナソニックHDは全事業領域で増益を目指す。車載電池、サプライチェーン関連、空質空調を成長事業と捉え、「事業競争力を高めていく」(梅田博和副社長グループCFO)考えだ。三菱は収益事業の拡大を継続し、過去最高の更新を目指す。シャープは液晶ディスプレーの堺ディスプレイプロダクトの生産を停止し、収益化を進める。沖津雅浩副社長は「黒字化したい」と力を込めた。
富士通は売り上げと営業利益の拡大を狙う。NECは成長事業を強化するとともに低収益事業の最適化を進める。
(24日付電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)