2024.05.24 【やさしい業界知識】産業用インバーター

産業用インバーター

モーターを効率よく動かす

省エネの実現に貢献

 インバーターは、モーターを効率よく動かして省エネを実現する装置。産業分野で使われる装置は「産業用インバーター」または「汎用(はんよう)インバーター」と呼ばれる。

 一般の家庭ではエアコンなどの家電製品に、産業分野ではエレベーターやエスカレーター、電車、ビル空調、工場の生産設備などと幅広く使われている。インバーターを用いることで、例えばエレベーターを停止階でゆっくり停止させたり、空調設備を設定温度に合わせて自動的に運転したりすることが可能となる。

 日本電機工業会によると、世界の電力消費量のうち4~5割はモーターによるものだ。日本では家庭用・業務用・産業用モーターが全消費電力の55%を占め、産業用モーターによる年間消費電力量は、産業部門の消費電力量の約75%を占めるという。

CO₂削減の動き

 世界各国でCO₂削減の取り組みが加速する中、相当量のエネルギーを使用するモーターの消費電力量を削減することは、大きな省エネ効果が期待できる。インバーターは、必要以上にモーターを回転させないように制御することから、注目が集まっている。

 発電所から変電所を経由しながら家庭や工場、ビルなどに送られる電気は交流だ。電圧や周波数は国・地域によって異なる。工場などのモーターは交流で動き、回転数は周波数と相関関係にあることから、このままモーターを回すと回転数は一定になる。

三つの回路で構成

 産業用インバーターは、「コンバーター回路」「コンデンサー」「インバーター回路」で構成される。交流電源をコンバーター回路へ通し、電圧と周波数を変換しやすいよういったん直流に変える。コンデンサーは充放電を繰り返すことで安定した交流を作り出す。そしてインバーター回路を通して、電圧や周波数を変えた交流として出力する。

 コンデンサーに蓄えた直流を交流に変えるオン/オフの繰り返し動作は「スイッチング」と呼ばれる。スイッチング素子はIGBT(絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)が用いられているが、次世代パワー半導体デバイスと呼ばれるSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)を採用した製品が主流になりつつある。

 電気自動車(EV)にはバッテリーが搭載され、動かすモーターは交流で、回転数を上げたり下げたりしながら速度を変える。ここでもインバーターが使われ、スイッチング素子にはパワー半導体が用いられている。EVの普及はパワー半導体の需要を拡大する。

 最近は産業用インバーターによるモーター制御を通じて機械の稼働状況を高速でモニタリングし、これらの情報から機械・設備の異常予兆を検知するIoT化も進んでいる。

(毎週金曜日掲載)