2024.06.27 【複合機&プリンターソリューション特集】商業印刷のデジタル化

キヤノンはvarioPRINT iX1700をdrupa 2024でも公開

富士フイルムBIはスマートファクトリーを訴求富士フイルムBIはスマートファクトリーを訴求

デジタル化は世界的傾向

各社、新製品やサービス展開

 商業印刷市場が漸減傾向にある中、デジタル印刷市場が拡大している。アナログのオフセット印刷が依然として市場の大半を占めているが、オンデマンドによる多品種少量印刷、短納期が優位性を持つデジタル印刷市場が年々拡大、この傾向は今後加速する見通しだ。世界的にデジタル化が進み、先頃ドイツで開催された世界最大規模の国際印刷・メディア産業展「drupa 2024」でも、デジタル化が潮流となっていた。

 現在、国内商業印刷市場に占めるデジタル印刷の比率は1割超とみられている。

 富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)の鈴木孝義グラフィックコミュニケーション事業本部DX推進部長は「アナログ印刷が漸減の一方、デジタル印刷は今後もさらなる成長が見込める」とみる。「デジタル化は世界的な傾向で、drupa 2024でも各社が新製品や新しいサービスの提案を活発に行っていた」と話す。

 コニカミノルタの植村利隆上席執行役員プロフェッショナルプリント事業本部長も、drupa 2024について「当社も含め各メーカーとも気合いが入っていた。展示品も高速化、大型化しているのが印象的だ。来場者数は、前回(8年前)の約26万人には及ばないものの、技術責任者や経営の責任者など意思決定者の来場が多く、商談は(前回比)倍以上で活発だった」と、デジタル化の加速を強調する。

 商業印刷業界では、慢性的な人材不足に加えて高齢化も進み、自動化などワークフローの改革が求められている。さらに、環境面からもデジタル化のニーズは強い。商業印刷業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化への期待が急速に高まっているのは事実だ。

 ペーパーレス化や、ウェブのような新しいメディアの台頭などで急速に市場が変化する中、短納期、多品種少量印刷対応、また、印刷工程の自動化・省力化など印刷業のDXの面からもデジタル印刷への期待は大きい。

 植村事業本部長は、デジタル印刷の優位性を「大量印刷、大量廃棄といった環境面の問題も、デジタル印刷によって解決できる。また、個々に合ったメッセージが可能で、印刷効果を高められる」と説明する。

 事務機メーカー各社は、培ったデジタル印刷技術を商業印刷分野に本格展開している。

 富士フイルムBIは「Add Value from DX」をコンセプトに、パートナー企業と連携してDXエコシステムを構築。商業印刷業界およびブランドオーナー向けに、「スマートファクトリー」「マーケティングDX支援サービス」などを提案している。

 スマートファクトリーでは、大量印刷を前提とし、オフセット印刷を中心とした従来の生産環境の課題である①各工程が個別に管理され、全体最適の観点を持った工程管理が困難②各業務が熟練技術者に依存(属人化)し、標準化が困難③時間と手間を要する工程間作業の可視化・管理が困難-などの解決を目指している。

 また、マーケティングDX支援サービスでは、顧客接点(店舗、Webサイト、デジタル広告など)から得られるデータを統合、可視化、分析し、企業のマーケティング領域のDX支援に力を入れている。

 鈴木部長は「drupaでは〝スマートフロー〟のコンセプトで、上流から印刷工程までを提案。反響が大きかった」と話す。

 キヤノンは、商業・産業印刷分野を成長分野と位置付け、戦略強化を加速させている。昨年10月に開催したCanon EXPO 2023では、商業印刷向けB3サイズ対応インクジェットデジタルプレスの「varioPRINT(バリオプリント) iX1700」、産業印刷市場向けインクジェットラベル印刷機「LabelStream(ラベルストリーム)LS2000」を発表した。

 iX1700は、新開発のインク循環機構搭載の高精細プリントヘッドと高濃度のラテックスインクの採用により、高い稼働率を達成しながら、オフセット印刷に迫る印刷品位を実現した。LabelStreamは、同社初の産業印刷向け水性インクジェットラベル印刷機で、最速で毎分40メートルの高速印刷が可能だ。

 drupaでも公開したほか、drupa初日にはグループ会社のキヤノンプロダクションプリンティング(CPP)とドイツの世界的な商業印刷メーカー、ハイデルベルグの枚葉インクジェット印刷機の販売に関するグローバルでの業務提携を発表した。

 リコーは、印刷業者およびビジネスパートナーとの価値共創に取り組むプラットフォーム「RICOH BUSINESS BOOSTER」を提供し、印刷アプリケーション、生産工程の自動化、省人化などを提案している。

 製品面では、多様化するニーズに応えるため、用紙対応力や自動化・効率化機能の強化、オペレーターの業務負荷の軽減に力を入れる。最新機種として、ゴールドやシルバーなど最大7色のスペシャルカラーに対応した「RICOH Pro C7500」、高次元の安定性と自動化・省力化を実現した「RICOH Pro C9500」などをラインアップしている。

 コニカミノルタは、高速デジタルラベル印刷機「AccurioLabel(アキュリオラベル)400」の販売を開始した。国内ラベル印刷市場はニーズの多様化などを背景に、デジタル化による成長が見込まれている。これまでのミッドレンジに、新たにハイエンド機を投入し、ハイボリューム領域で攻勢をかける。

 また、「創注・受注拡大支援」「生産性向上支援」の2軸で商業印刷のDX化を推進、印刷業界のビジネス成長と収益力向上に注力する。熟練した技術者不足に対応し、高度で緻密な調整業務をスキルレスで行える簡単設定機能など、省力化ニーズに応えている。

 デジタルマーケティングに対応した取り組みでは、クラウドサービス「Printバル」を、印刷会社の営業スタイルの変化を支援するサービスとして提供。印刷の効果を高めるために独自の画像解析技術と感性脳科学を組み合わせた「EX感性」もアピールしている。

 日本HPは、デジタル印刷機「HP Indigo」のグローバル展開の実績と強みに「HPのグローバル印刷ネットワーク」を挙げる。工程自動化ソリューション「HP PrintOS Site Flow」を活用することで、自社のECサービスだけでなく、海外のECサービスも活用することができる。

 京セラドキュメントソリューションズは商業印刷機「TASKalfa PRO 55000c」を新たにラインアップしている。