2024.06.28 【やさしい業界知識】オシロスコープ
高分解能化が進むオシロスコープ
電気信号観測用の計測器
パワエレへの適用で需要増
オシロスコープは電気で動く機器の電気信号を観測する基本的な波形計測器の一つ。時間的な経過とともに入力信号の変化をグラフ表示する。電気・電子機器で広く使われるデジタル回路の動作障害はノイズなどを原因とする場合が多い。こうした原因を探る場合にオシロスコープを使って計測する。
1940年代に開発
本格的な計測用オシロスコープは1940年代に開発、国産機も50年代に実用化された。その後、トランジスタなど半導体の進化で小型化が進展した。オシロスコープにはアナログとデジタルがあり、現在はデジタルオシロスコープが主流となっている。
アナログオシロスコープは、CRT(ブラウン管)というガラスで作られた部品を使って電気信号を表示する。データを保存し、後で解析することはできないが、入力信号をありのままに表示できる。
デジタルオシロスコープは、アナログ信号をデジタルに変換するAD変換器を利用してディスプレーに波形を表示する。波形の解析に適し、製品の不具合の原因を探したり、ノイズに埋もれた信号を取り出すことができる。波形の保存や加工などの処理ができるため、現在では不可欠な開発ツールとなっている。家電製品の開発や電気部品生産ラインの品質確認など幅広い用途で使用されている。
従来、オシロスコープは通信分野での利用が多かったが、近年は電源や電流の高効率化を目指す「パワーエレクトロニクス」が大きな適用分野になっている。この分野に用いる電力変換装置の計測には、高分解能・高速サンプリングのオシロスコープが求められる。
サンプリング高速化
電力信号のアナログ値をデジタルデータに変換することを「サンプリング」と呼び、そのタイミングが高速なほど、速い信号を捉えられる。
GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)などのパワー半導体の高速信号を捉えるためには、より広帯域で高速のサンプリング速度が必要となり、各社が製品投入に力を入れる。
選定対象とオシロスコープ本体を接続して信号を取り込むプローブ(探針)も測定の精度を大きく左右するため重要になる。近年は光ケーブルを使い、ノイズの影響を排した「絶縁プローブ」がGaNなどを使った電源モジュールの開発に活用されている。
日本電気計測器工業会(JEMIMA)によると、自動車などの電動化によるプロトコル解析と波形観測の増加、パワーエレクトロニクスで使用される電力変換装置の開発、GaNを用いた次世代パワー半導体の需要増などで24年以降もオシロスコープの需要増が期待されている。
(毎週金曜日掲載)