2024.07.05 【やさしい業界知識】デジタルマルチメーター(DMM)

ベンチトップタイプのDMM製品

1台で電流や電圧などを測定

機能の高度化が進む

 テスターは電気の物理量を測る最も基本的な計測器。このうちデジタル式をデジタルマルチメーター(DMM)と呼ぶ。

 DMMは直流・交流の電流や電圧、抵抗などを1台で測定できる。2本のテストリード(先端が棒状の測定具)を被測定物に接触させると電圧値や抵抗値が表示され、機器の動作状態の確認や故障診断ができる。電気・電子機器の開発や電気設備の保守管理、工事現場など、さまざまな場面で利用されている。

 デジタル式のテスターに対し、アナログ式は可動コイル型のメーターで指針の指す位置の目盛りを読む。一方、デジタル式は液晶ディスプレーなどに数字が表示され、アナログ式に比べて読み取り間違いが起きにくい。

 アナログ式には針の振れ具合で瞬間的な変動などの「電気の変化」を直感的に判断できるといったメリットがある。

さまざまなサイズ

 持ち運べるハンディータイプ、デスクや作業台に置いて使う高機能なベンチトップタイプ、シャツなどの胸ポケットに収まるポケットタイプまで各種のサイズがある。

 直流・交流の電流や電圧、抵抗などの測定項目「ファンクション」をスイッチで切り替えて使用する。測定対象を自動判定する機能「オートファンクション」もある。

 各ファンクションで測定できる範囲をレンジと呼び、多くのDMMは測定対象に応じて自動的にレンジが切り替わる「オートレンジ」を採用。一般的に高額なハイエンドタイプは、ファンクション数が多く、レンジも広い傾向がある。

 周波数や温度測定、騒音測定ができる製品など多機能化も進んでいる。

 少子高齢化に伴う人手不足が深刻化する中で、電設関係や建設現場では測定作業やデータ管理の効率化に向け、通信機能を備えた現場測定器のIoT化が進む。

 近距離無線通信規格「ブルートゥース」対応のモジュールを搭載して、無線で測定データをスマートフォンやタブレットなどの端末に転送し、自動で記録するといった活用が広がっている。数値の転記ミスや読み取りミスが解消され、測定作業効率の大幅な向上が期待できる。

より高分解能に

 小型化、低消費電力化する高精度の電子部品、それらを含む電子回路の評価などに活用される現場では、より高分解能・高確度なDMMが求められている。

 超精密部品などの自動検査システム用として、8桁半表示が可能な最上位機種のDMMは非常に高確度な測定が要求される場面で活用される。通信関係の電子部品や半導体、センサーの開発現場や品質保証用などに使用される。近年は設計開発の効率化などを踏まえ、解析機能を持つ製品は増えている。(毎週金曜日掲載)