2020.06.01 【電波の日特集】 6月1日は「電波の日」中波・短波や5Gなどあらゆる場所で利用

写真1 「一家に1枚光マップ」の一部分写真1 「一家に1枚光マップ」の一部分

写真2 家電量販店でも取り扱っているトランシーバ写真2 家電量販店でも取り扱っているトランシーバ

国内無線局、3月末で2.7億局

 6月1日は「電波の日」。1950年に電波法、放送法、電波監理委員会設置法が施行されて、電波利用が広く国民に開放されたことを記念して制定されている。

 総務省と情報通信月間推進協議会は、情報通信の普及・振興を図ることを目的に5月15日から6月15日を「情報通信月間」としているが、今年は新型コロナウイルス感染予防の観点から、催事などは開催されない。

電波は人類共有の財産 

 電波は、人々の暮らしのあらゆるところで利用されている。20世紀半ばまでは、中波(MF=ミドル・フレケンシー)や、短波(HF=ハイ・フレケンシー)を利用した、無線通信やラジオ放送での利用が主流だった。

 技術進歩とともに、超短波(VHF=ベリー・ハイ・フレケンシー)や極超短波(UHF=ウルトラ・ハイ・フレケンシー)によるテレビ放送や通信も実用化された。

 次世代高速通信規格5Gでは、マイクロ波(SHF=スーパー・ハイ・フレケンシー)に分類されている28ギガヘルツ帯を使用している。

 第1図は、日本の電波の周波数利用の割り当てを示している。電波は周波数により、届き方などの性質が異なる。低いほど振幅の波長が長く、高いほど波長は短くなる。

 長波は地表に沿って伝わりやすく安定して利用できる。水中でも届くため、潜水艦で利用されている。

 中波は昼間の到達範囲が限られており、主にラジオ放送で使われる。県単位で異なった放送局が存在できる背景でもある。

 短波は、地球を取り巻く電離層と地表を反射しながら遠方まで届く性質がある。外国向けのラジオ放送や通信で使われている。

 超短波から上の周波数は直進性があり、高くなるほど光のような性質になる。電波は光の一種でもある。

 ミリ波(EHF=エクストリームリー・ハイ・フレケンシー)や、サブミリ波(THF=テラヘルツ/トリメンダスリィ・ハイ・フレケンシー)は、光の性質とほとんど変わらない。

 写真1は文部科学省が無償配布している「一家に1枚光マップ」。電波を含む光の全貌が分かりやすく紹介されている。ネットで検索し、ダウンロードすることをぜひお勧めする。

増え続けている無線局の数

 電波を利用する国内の無線局の総数は3月末現在で約2億6600万局に達している。前年同時期より、約1500万局増えた。

 最も多いのが、陸上移動局に分類されている携帯電話で、約2億6300万局ある。グラフ1は陸上移動局を除いた無線局の増減グラフで、携帯用基地局と簡易無線局の伸びが著しい。

 近年は台風、豪雨、豪雪、竜巻、地震、噴火など〝かつてない規模〟の自然災害や遭難事故が多発している。

 携帯電話が通じない状況下でも「情報ライフライン」として活用できることが広く認知されるために、業務用無線機器への関心が高まり需要は大きく伸びている。

 無線機器のアナログからデジタルへの移行期限の22年が迫っていることも追い風だ。

 現状の無線機デジタル化率は50%ほど。今後大きな需要が期待されている。デジタル化が進むとともに、簡易無線機の評価はますます高くなっている。

 データ通信や、ネット、電話網との連動も可能となり、利用しやすい簡易無線局は好調な伸びを示す。

業務用無線とは

 業務用無線には「特定小電力無線」「簡易無線」「小エリア通信システム」「一般業務用無線」「MCA無線」の5種類がある。第1表にまとめた。

 「特定小電力無線」は、無線従事者の免許も無線局の免許もいらない最も簡便なもの。製品価格も安く買ったその場で使えるトランシーバで、家電量販店のラジオ売り場などにコーナーが常設されている(写真2参照)。

 「簡易無線」は、グラフ1に示されているようにデジタル化製品が発売されて急成長している。「陸上移動局」とされている携帯電話やスマートフォンと「基地局」に次ぐ局数がある。電波の出力は5W以下に強化されて実用性が高くなっている。

 22年11月30日には、従来使用されているアナログ方式の簡易無線機器が使えなくなるため、買い替え需要が期待できる。

 利用面では無線従事者の免許が不要。高所や上空での使用もできて、データ通信も可能になった。

 イベント用などでも随時使用ができる無線機のレンタルも認可されていて、ネット上でレンタルを訴求する店が増えている。

 IP網を使って電波到達範囲外とも通信することが可能でGPSによる位置確認やセンサーからのデータ転送もでき、仕事にもレジャーにも使える。

 「小エリア通信システム」は、特定小電力無線と簡易無線の中間の通信性能がある。

 「一般業務用無線」は、公共的な無線通信用に許可される。警察、消防、電気、ガスや交通などで利用。タクシーや警備会社、放送局などの企業にも通信目的限定で個別に免許されている。

 「MCA無線」は、全国11の移動無線センターが配置している通信制御局を利用して通信ができる方式で、中継局には発電機が備えられ、災害に強い通信ネットと評価されている。

 ドコモのLTEと3Gとの連動サービスをはじめ、サービスエリアを大幅に拡大しており、超広域カバーの無線として、あらためて注目されている。

 第2表は、3月末現在の用途別無線局数。[[デジタル簡易無線活用方法とメリット]] トランシーバと呼ばれる業務用無線機は、ホテルや娯楽施設などのサービス業や病院、販売店、企業、工場、建設現場で見かけることがある。

 専門店では申請手続きなどの指導も行っていて企業や自治体規模の安全・安心インフラ構築目的の利用が増えている。

 携帯電話は番号を押さないと通話できないが、送信ボタンを押すだけで電波が発信される。音声を感知して自動送信する機能が組み込まれている製品もある。

 ヘッドセットと呼ばれるヘッドホンマイクを利用すれば手放しで通話ができる。同時に多数の複数局に情報伝達できる「同報通信」も携帯電話にはない機能。

 いずれも国に定められた特定の周波数を利用していて、電波到達エリア内では安定した通信が維持でき、通話の秘密も守りやすい。デジタル化されてから秘話性が高くなったのも、企業や自治体等で好評。導入や運用コストが低く抑えられるのも高評価を得ている。

 第3表に、デジタル簡易無線の特徴をまとめた。需要の伸びはこれらの機能や性能が受け入れられた結果だ。