2024.07.12 【電子部品技術総合特集】研究開発取り組み 日本航空電子工業 中島伸一郎フェロー 商品開発センター長
中島 フェロー
AI技術を積極的利用
成長分野ターゲットに深掘り
日本航空電子工業はセンシングや分析・加工技術を競争力の源泉に、社会課題解決を責務と捉え研究開発に邁進している。「社会を守る責任」「新技術を創出し続ける責任」をビジョンに、継続的な産業貢献を目指している。
中島伸一郎フェロー商品開発センター長は「変化スパンが一層早まり、ハードウエアよりコンテンツ重視の時代となっている。自動車分野でも水平分業でコモディディー化するという変化が起きている。一方で、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの潮流はわれわれには追い風」と話す。
同社は自動車、5G通信、ロボット、ウエアラブルなどの成長分野をターゲットに、既存技術の深掘りを目指すモノづくり研究開発に取り組むとともに、材料・プロセス技術、微細加工などの基盤技術分野と、センシング、データ統合、AI(人工知能)、実装などの機能化技術分野をシーズ技術として、新事業領域探索への企画・調査研究開発、事業部連携研究開発に取り組む。
新事業領域拡張への研究開発では、フィルム型コネクター(FTC)研究、独自のMEMS加速度計を用いた高精度センサーシステムによる橋梁(きょうりょう)劣化診断研究、独自の水位計システムによる地すべりセンシング実証実験を継続。
これらの社会課題解決型探索研究を通じ、IoTによるデータ駆動型のビジネス創出に必要なデータ統合・解析・呈示技術、AIによるデータ処理技術、省電力化技術、ニーズ探索手法などを醸成しつつある。
既存技術の深掘りを目指すモノづくり研究開発では、大学発ベンチャーとの協業で、AI技術を積極的に利用した材料特性評価技術の醸成とともに、その品質判定への適用なども製造現場と連携して進めている。
また、撥水付与や潤滑や摩耗といった現象に関する材料特性の制御技術を磨き上げている。例えば、EV充電端子などの接点部における金属めっき膜の摩耗を大幅に抑制する接点界面の設計技術を「wearzerO」として商標登録を完了。摩耗抑制に加え材料使用量低減にも寄与する技術として評価される。
カーボンニュートラル対応では、材料再利用や植物由来材料への代替などのニーズへの対応を進めている。「再エネや省エネとは異なり、再生材活用は数値化が難しくコストも上昇する。その価値を認め、プロセス自体の変革に取り組むブランドオーナーの発掘が非常に重要になる」(中島フェロー)。