2024.07.14 脱炭素、事務機大手で加速 全拠点で100%再エネ使用など

100%再エネ化したキヤノンのベトナム工場

 事務機大手各社が、複合機などの生産拠点の使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えたり、製品の再生プラスチック使用を拡大したりと、カーボンニュートラル(CN)実現に向けた取り組みを加速している。リコーが2040年に温室効果ガス(GHG)実質排出ゼロを計画しているほか、富士フイルムグループも40年度までにネットゼロを目指す。複合機は日本メーカーが世界シェアの8割を占め、近年、海外で強まる環境規制強化への対応も不可欠となっている。

 リコーは、日本企業としていち早く国際イニシアチブRE100に参加するなど環境対策を強化してきた。複合機本体の樹脂総重量の約50%(重量比)に再生プラスチックを使用しているほか、製品の梱包(こんぽう)材にリサイクル可能な紙材料を使用するなど環境対策を強化している。

 富士フイルムグループも40年度までにネットゼロに取り組んでいる。富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)は、30年度までに新規資源投入率を60%以下にする計画を推進。リユース拡大に加え、再生プラスチックなど再生材の活用を増やす。国内オフィス拠点では初となるカーボンニュートラルオフィス(東京・新宿)を実現したほか、横浜・みなとみらいにはサステナブルな地球の未来を探究する体験型施設「Green Park FLOOP」を新設。欧州での資源環境規制強化などの動きに対応し、新たにオランダに資源循環の拠点を開設した。

 キヤノンは08年から、製品1台当たりのライフサイクルCO₂を年平均3%改善する目標を掲げ、23年までの累計で44.4%の改善を実現。30年には08年比50%の改善、50年までに製品ライフサイクル全体でのCO₂排出量をネットゼロにすることを目指している。アジアのプリンティング事業の主力生産拠点5カ所で使用電力の全てを再エネ化した。

 コニカミノルタも「50年にネットゼロ」の目標を掲げ、海外複合機生産拠点は全て100%再エネ化を図っている。複合機の再生材使用率は業界トップクラスで、今後、複合機事業で培った技術を活用して他社製品向けのリサイクル材を共同開発し、再生材サプライチェーンでの脱炭素化に力を入れていく。

 セイコーエプソンは50年に「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」を目指し、商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減に注力する。昨年12月には国内の製造業では初めて、日本を含めた全世界の拠点で使用電力の100%再エネ化を実現した。

 環境問題などでは、メーカー間や業界レベルでの連携も求められる。

 リコーと東芝テックは、開発・生産面での合弁会社「エトリア」を1日に設立。富士フイルムBIとコニカミノルタは原材料・部材調達の合弁会社を近く設立する。

 業界レベルでは、ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)加盟会社の動脈物流が本格化した。今後は製品・資源の回収など静脈物流への進展も期待され、業界挙げてのサーキュラーエコノミーへの取り組みが加速する見通しだ。