2024.08.23 通勤車のEV化でCO₂削減 日立インダストリアルプロダクツ、独自の大容量急速充電設備を横展開へ

報道陣らに公開したWEP=21日、茨城県土浦市

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マルチポートEVチャージャマルチポートEVチャージャ

従業員自らが出勤後に急速充電従業員自らが出勤後に急速充電

小林社長小林社長

五味部長五味部長

日立の末次センタ長日立の末次センタ長

 日立インダストリアルプロダクツは、複数台の電気自動車(EV)の同時充電ができる独自開発のEV充電設備を土浦事業所(茨城県土浦市)に設置し、通勤用EVによるCO₂削減モデルの運用を7月に始めた。従業員の通勤車をEV化し就業中に充電することで通勤に伴うCO₂削減を目指すもので、土浦事業所のマイカー通勤者全員に適用した場合、CO₂削減効果は1人当たり年1トン、通勤手当は約80%削減できると試算している。今後実証を進めながら、日立グループへの展開も図っていく。

 EV化促進CO₂削減モデルを「ワークプレイス・E-パワリング(WEP)」と名付け、実証を本格化した。昨年製品化した、大容量で超急速充電が複数台同時にできるEV充電設備「マルチポートEVチャージャ」を土浦事業所の駐車場に設置し運用を始めた。

低コストで拡張可能

 マルチポートEVチャージャは、標準で500kWの大容量を確保。戦略経営本部事業戦略第一部の五味玲部長は「25kWで20台分の同時充電をしたり、50kWで10台の同時充電をしたり、柔軟に充電環境をつくれる」と話す。設置後もソフトウエアで柔軟に機能を拡張できる「ソフトウエア・ディファインド」型の設計になっているため低コストで拡張ができる。

エネマネ、V2Hに対応

 エネルギーマネジメントやV2Hにも対応し、電力消費のピークシフトやピークカットなどもできる。マルチポートEVチャージャを軸にビルや工場などと連携したエネルギーマネジメントシステムに発展させることができるほか、各施設などへの電力供給サービスの実現や大型車両向け急速充電設備の構築も可能だ。

 他社にないマルチポートの仕組みにより、導入コストも抑えられ、20ポートであればポート単価620万円程度で構築できる。マルチポート化することで、個別に組み合わせる設備と違い、共用設備費用なども抑えられるとみる。

 今回、EVを最大80台まで同時接続でき、20台までの同時充電ができる設備を導入した。WEPは、従業員が通勤にEVを使い勤務中にEV充電をすることで「スコープ3カテゴリー7」に該当する通勤車両におけるCO₂削減を実現できる。

 企業側はCO₂削減に加え、通勤手当を削減できるほか、各種エネルギーマネジメントが可能になる。従業員は、自らも環境を意識した取り組みに参画できるだけでなく、EV用自宅充電器が必要ない。自家用車としてEVを活用できるため満足度も上がる。

 今回まず20人が参画して運用をスタートした。土浦事業所のマイカー通勤者は324人で、プロジェクト前はガソリン車かハイブリッド車のみだったが、20人はEVに入れ替えて取り組みを始めた。「若手社員が多く関わり、従業員エンゲージメントにもつながっている」(五味部長)。

 同社の試算では、土浦事業所の該当者全員がEVに切り替わることなどによってCO₂を年370トン、通勤手当を年3000万円削減できる見込みだ。

 充電管理などは日立製作所グループのグローバルロジックと連携して開発している。スマートフォンアプリも開発中で今年度下期に運用を始める予定。

海外での導入も視野

 WEPは日立グループのコネクティブインダストリーズセクターで横展開していく。2~3年後をめどに順次グループ会社にも導入するほか、海外での導入も進める。日立製作所コネクティブインダストリーズ事業統括本部の末次陽二グリーン戦略推進センタ長は「WEPを起点に社会課題の解決を目指し、自治体などとも連携していく」と見通しを示す。今後、拠点間エネルギーマネジメントや地域電力ネットワークの構築にも取り組む。関東では東京電力パワーグリッドと検討を始めた。

 日立インダストリアルプロダクツの小林圭三社長は「環境負荷低減に関心の高い顧客が多いことから、EVチャージャを起点にさまざまなソリューション提案をしていく」と述べる。