2024.12.03 産業機器に使用される半導体の製造中止は悩みのタネ 再生産や代替提案などでEOL対策を提案

長期保管された製品も安心して使ってもらえるよう品質管理は重要

製造業を悩ます半導体のEOLとは?

 新製品が発売され、旧モデルが生産中止となることは、どの産業界でも日々起こっている。むしろ製品サイクルは年々早くなり、新しい機能が搭載された新製品への買い替えを促進するため、計画的に生産を終息させるケースも多い。こうした生産中止や製品サイクルの終了を「EOL(End of Life)」と呼ぶ。

 EOLは半導体業界でも起こっている。スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器では、新たなCPUの量産開始とともに、旧モデルの生産量を減らし、やがてEOLとなる。これらデジタル機器のように新製品サイクルに合わせ、計画的にEOLに向かうケースはまだいい。半導体を使用するユーザー側も新製品を用いて、付加価値の高い製品をリリースすることができるからだ。しかし、何十年も稼働する産業機器に搭載される半導体が突然、生産を中止することになったらどうだろう。

半導体のEOLは大きなリスク

 半導体のEOLに合わせて、各種機器を制御する回路も再度設計しなければならない。当然、回路設計のためのコストや人員、開発期間も必要となるため、産業機器などの息が長い製品を製造するメーカーにとっては大きなリスクだ。

 近年、こうした古くからある「レガシー半導体」のEOLが増えている。増加の背景には①半導体メーカーの製品戦略②半導体業界の再編による製品ポートフォリオの変更③コロナ禍に起こった半導体不足の影響―など、さまざまな理由が挙げられる。いずれにしても、レガシー半導体を使った製品を製造しているユーザーにとって、EOLは悩みの種である。こうしたユーザーの困り事を解決するために、さまざまな企業が独自のソリューションを提供している。

独自のソリューションでEOL対策を提案

渡辺テクニカルセールスマネージャー
ロチェスターエレクトロニクスのビジネスモデル

 米ロチェスターエレクトロニクスは、世界の主要半導体メーカーのEOL製品をオリジナルメーカーに代わって継続的に供給する半導体メーカーおよび代理店。グローバルで70社を超える半導体メーカーとパートナーシップを結び、高い品質の製品供給を行っている。

 同社は米国マサチューセッツ州ニューベリーポートに本社を構えており、日本法人は東京、大阪にセールスオフィスがある。提供する継続供給サービスは、パートナーである半導体メーカーから移管された製品在庫を供給するケースとウエハーから再生産するケースの2種類。現在は再生産よりも製造中止品の在庫製品を購入する顧客が多い。

 メイン事業のEOLビジネスは、ダイ(ウエハーから切り出した状態)換算で120億個以上のウエハー在庫を持ち、7万種類を超える製品展開が可能。これまで2万種類以上の再生産実績がある。ウエハー設計、組み立て、テスト、IPアーカイブなど、製造サービス全般をターンキー・ソリューションとして提供することで、短期間での市場投入を実現する。

 EOL対策のためとは言え、長期保管された半導体の購入をちゅうちょする顧客は多い。そこで重要となるのが、長期保管された製品であっても不具合なく、安心して使用できる確かな品質だ。

 製品の技術サポートや品質管理を担当する日本法人の渡辺桂三テクニカルセールスマネージャーは「長期保管する製品は全て、徹底した品質管理を行っている。解析ラボも有しており、試験設備を用いた検証も行っている。デートコード(部品の製造年月日)を気にする顧客も多いが、デートコードはあくまでも製造年月日で品質を示す指標ではない。当社の検査では最も古い製品で17年前の製品を検査したが問題はなかった。製品在庫は全て、半導体メーカーが推奨する保管条件に合わせて保管している。顧客には安心して購入してほしい」と話す。

 再生産の場合も半導体メーカーから提供されるテストプログラムに沿った試験を実施。テストプログラムがない場合はデータシートに合う仕様に作り込み、他製品と同様の品質管理を行う。

代替商品でEOL対策する手も

 メーカーから移管した製品供給や再生産とは異なるEOL対策として、代替製品の活用も一つの方法だ。

代替製品をブランドとして提案するリバウンドエレクトロニクス

 イギリスに本社を構える電子部品・半導体の独立系商社であるリバウンドエレクトロニクスは、独自の代理店ブランド「Nuvonix(ヌーヴォニクス)」を立ち上げ、グローバルで提案を開始している。ヌーヴォニクス商品として扱うのは大手メーカー製品と互換性のある製品が中心。アナログ系半導体やディスクリートを数多く取りそろえ、EOLの代替製品として提案している。

 日本法人の塚原雅之代表取締役は「EOLは継続的に増えているため、設計変更に取り組む顧客も多い。互換製品の需要は高いと見込む。国内で技術サポートできる体制を構築し、ヌーヴォニクス商品の拡販に取り組む」と話す。

 同社ではフィリピンに代替品を調査する専門部隊がおり、技術的な仕様も含め解析している。互換性のある代替製品の提案も含め、多様な顧客ニーズに対応できるのが同社の強みだ。

 このほかにもEOLの調査サービスや再設計支援サービスなど、半導体商社を中心に多種多様なソリューションを提案している。今後も増え続けるEOLに対し、迅速な対策を行い顧客の生産を止めない施策が求められる。