2024.12.10 OSAT世界シェア1、2位の企業が福岡に進出
新R&Dセンターが入居を予定しているビル
TSMCの進出を契機に半導体産業の投資熱が高まる九州。国内の半導体関連企業も積極的な投資を行い、TSMCの工場がある熊本県を中心に新工場建設や拠点開設が相次ぐ。そうした中、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)世界2位のシェアを誇る米アムコー・テクノロジーは11月末、福岡市内にR&Dセンターを開設すると発表した。これに先立つ8月には、OSAT世界最大手である台湾の日月光投資控股(ASE)が、北九州市と市所有地約16ヘクタールを約34億円で購入する仮契約を締結した。同社日本法人は「北九州市への進出を検討はしているが、まだ決定ではない」としたものの、新工場の開設などに期待が掛かる。これが実現すれば、OSAT世界1、2位の企業が福岡県に拠点を置き活動を始めることになる。先端半導体の国内製造実現に向けた大きな一歩が、福岡の地から踏み出される。
OSATとは半導体メーカーやファウンドリーから回路形成したウエハーを受け取った後、チップに切り分け動作確認テストを行い、パッケージに実装・封止し半導体製品に仕上げる専門の企業のこと。ウエハーの製造や回路形成を行う前工程でTSMCなどのファウンドリー企業が存在するのに対し、後工程をOSATが担う。多くの工程が存在する半導体製造において水平分業が進む中、ファウンドリー企業の成長とともにOSAT企業も着実に成長を遂げてきた。
今回発表されたアムコー・テクノロジーのR&Dセンターは、2025年春の開設を予定。先端パッケージング技術や先端半導体プロセスの研究および量産を見据えた技術開発に取り組むほか、材料に関する基礎開発・新規材料用設備の検討を行う。
日本法人の川島知浩代表取締役社長は「新R&Dセンターの開設を契機に、開発力のさらなる強化につなげる。車載を中心としたビジネス拡大への貢献、日本の強みである材料・装置開発への注力を通じて業界に貢献する」と話す。今後、同R&Dセンターは日本国内における研究開発の要所とする一方、同社グループの海外拠点との連携も進めていく。韓国のR&Dチームのほか、フィリピンやマレーシアにある工場とのハブとしての役割を担うなど、重要な拠点となる見込みだ。
ASEが用地取得する北九州市の土地は、近隣に九州工業大学などもある学術研究都市。広さは約15万9899平方メートルで、工場としての活用のほか、近隣研究機関との研究開発拠点として活用する可能性もある。ASEは1984年に台湾で創業。OSATとしてTSMCともかねて連携関係にあり、半導体のグローバルサプライチェーンにおいて重要な役割を担ってきた。
TSMCの熊本第1工場が稼働を開始し、27年には第2工場も稼働させる予定だが、課題とされているのが後工程だ。ASEの進出が決まれば、九州で後工程まで一貫して担えるようになり、九州における半導体サプライチェーンがより一層強くなる。また、チップレットや3次元実装など先端パッケージング技術の開発が進み、後工程の重要性は年々高まっている。アムコー・テクノロジーのR&Dセンター開設は、先端半導体の開発を支える契機となる。シリコンアイランドとして着実に成長を続ける九州。今後も半導体産業の集積地として、半導体産業の成長をけん引する。