2024.12.12 「GaN」の大型ウエハー日本初公開 独インフィニオンが次世代パワー半導体向け

右が300ミリメートルGaNウエハー

左からPFNの西川CEO、同社の岡野原大輔最高研究責任者、インフィニオンのハネベックCEO左からPFNの西川CEO、同社の岡野原大輔最高研究責任者、インフィニオンのハネベックCEO

 パワー半導体世界最大手の独インフィニオン・テクノロジーズは、脱炭素化とデジタル化がテーマのイベント「OktoberTech(オクトーバーテック)」を毎年各国で開催している。日本でも4日に東京都内で開催され、同社が世界で初めて製造した300ミリメートルのパワーGaN(窒化ガリウム)ウエハーも展示された。国内新興AI(人工知能)企業のプリファードネットワークス(PFN、東京都千代田区)の西川徹CEO(最高経営責任者)らとの対談も行われた。

 ヨッヘン・ハネベックCEOは基調講演で、「AIに電力を供給し、AIを可能にし、AIを利用する」と、AIと同社の関わり方を示し、それらの中での脱炭素の取り組みを紹介した。AIの学習やデータ処理を行うデータセンター(DC)では、膨大な電力を使用する。AIの普及拡大に伴うDCの電力消費量増加という大きな課題に触れ、顧客とともに解決に取り組む方針を示した。

PFNのCEOと対談

 PFNとのセッションもサステナブルなAIに関するテーマだった。同社はAI半導体からソフトウエア開発までを垂直統合で手掛け、計算インフラ全体の最適化を目指している。パワーソリューションだけではなくユーザー側のAIの使い方を含めて電力消費の問題に取り組むべきだという視点を確認し合った。

 ハネベックCEOは「リージョナル化はイノベーションにとって役立つものではない」とグローバルな協力体制の重要性も語った。

300ミリメートルのGaNウエハー

 イベントでは次世代の半導体材料として注目される窒化ガリウム(GaN)の300ミリメートルウエハーの日本初の展示もあった。

 GaNは既存の半導体の材料であるシリコンより電力効率に優れ、5G通信やEV充電器への用途が期待される。GaNを原料とした300ミリメートルのウエハーはインフィニオンが世界で初めて製造に成功した。ウエハーが大きいほど多くのチップを製造でき、既存の300ミリメートルの製造ラインを活用できるため、効率的な生産を実現できる。次世代パワー半導体はコスト低減や生産数量拡大のため、ウエハーの大口径化が進む。GaNとともに次世代パワー半導体として利用拡大が進む炭化ケイ素(SiC)も従来の150ミリメートルから200ミリメートルウエハーへと移行し始めている。インフィニオンは今年8月、マレーシアのクリム工場を新設し、200ミリメートルのSiC生産ラインを稼働させた。

 今後も幅広い領域で次世代パワー半導体の需要は拡大すると見込まれる。今回のイベントでも300ミリメートルGaNウエハーの展示には多くの来場者が集まり、注目を集めた。