2025.01.01 【家電総合特集】デジタルAV’25展望 市販カーエレクトロニクス

市販市場はエンタメ化がポイント。ナビの大画面化とともにネット動画視聴を強化する製品も増えている

ディスプレーオーディオ拡大

エンタメがキーワード

 2025年の市販カーエレクトロニクス市場は転換期を迎える。新型車のディスプレーオーディオ(DA)装着が進むとともに、高級車を中心に市販カーナビゲーションシステムを装着できない車種が増えてくることが予想され、従来のナビ中心の製品開発から、クルマでの移動をより安全に楽しくするエンターテインメントをキーワードにした製品開発と展開が鍵を握る。同時に車齢の伸びている既販車向けの提案が重要になるとみられる。

 市販カーナビは8インチや9インチといった大画面モデルが人気となり、販売を伸ばしている。新型車の大画面化が進んでいることもあり、大画面の市販ナビをそのまま装着できる車種も増えている。車種を問わず大画面ナビが取り付けられるモデルも充実してきた。

 ダッシュボードからディスプレーが浮き出るフローティング構造を採用したナビであれば、埋め込み型では大画面が入らない車種でも9インチ以上の大画面ナビが装着できるようになる。パナソニックがいち早く製品化してきたが、現在はパイオニアもJVCケンウッドもアルプスアルパインも各社がフローティングモデルを用意するまでになった。

 さらにこの2~3年は、エンターテインメントを求める声を受け、オーディオなどエンタメ機能を強化する動きが活発だ。最近はインターネット接続を前面に出すメーカーが増えている。ネット接続はパイオニアがいち早く提案し、ネット動画視聴やストリーミング音楽をドライブで楽しむ提案をしてきた。昨年はパナソニックがネット動画対応を強化した。さらにケンウッドもスマートフォン連携を前面に出す。

 ここ数年はDAの市場も一気に拡大してきている。スマホの画面をDAの画面に表示できるため、ナビを購入せずDAを装着する人も多い。24年もカーナビ市場は厳しかったがDA市場は伸びており、ナビとDAを合わせると、市販製品の装着率が下がっていないメーカーもある。DAの製品展開を強化するメーカーも増え、今年もDA市場は堅調に伸びていくとみられる。

 市販製品は、オーディオや後席モニターなどの接続性など、柔軟に拡張できることも大きな特長だ。実際、各社はナビ周辺機器を強化する動きもある。これまで人気だったトヨタのアルファード・ヴェルファイアの新型は市販製品が取り付けられなくなった。特にトヨタの新型車は市販製品が取り付けにくい設定になりつつある。

 そこで各社が強化しているのがエンタメ機能だ。特にオーディオへの取り組みも進み、パイオニア、ケンウッド、アルパインはスピーカーやアンプなどオーディオシステムの開発を強化している。

 パイオニアはオーディオ製品を幅広くそろえ、昨年もスピーカーやアンプを拡充。車種専用設計を貫くアルパインも昨年はオーディオの新たなブランドを立ち上げ展開を始めた。手軽に高音質化を提案するケンウッドもスピーカーの提案を進める。

 ナビやオーディオ取り付けキットを開発するカナック企画は22年に純正オーディオの音を改善する純正サウンドアップ用コード「ESシリーズ」を発売した。市販ナビが付かない車種でも純正ナビに配線加工をせずにパワーアンプやウーハーを取り付けられることを前面に出して提案している。

 ナビの装着の幅が狭まる半面で、良い音で音楽を聴きたいという需要は底堅く、スピーカー交換への需要も増えてきているため、今年は音を切り口にした提案がさらに進みそうだ。

 趣味性の高いクルマへの提案も始まっている。クルマを自分好みにカスタマイズして乗りたいユーザーは市販製品を選ぶことが多い。この1~2年は趣味性の高い車種に向けた展開が進む。

 アウトドアやキャンプなどで人気の三菱デリカD:5やデリカミニをはじめ、スズキ・ジムニーなどはユーザーの多くにカスタマイズ志向が強い。カスタマイズして乗る人の多いトヨタ・ハイエースも市販製品の装着率が高くカーナビ各社も専用製品を開発。販売も伸びているという。キャンピングカーをターゲットにするメーカーも増えてきた。趣味性の高い車種向けの提案は、今年さらに増えるとみられる。