2025.01.01 【家電総合特集】デジタルAV’25展望 テレビ

視聴環境や見たいコンテンツに合わせて4K有機ELや4KミニLED液晶を提案する

大画面・高画質・高音質・ネット対応

 2025年の国内のテレビ市場は、買い替え需要をいかに取り込んで大画面化、高付加価値化につなげるかが成長の鍵を握りそうだ。コロナ禍の巣ごもりから抜けた23年以降は消費者の支出先が内から外に向き、テレビの需要は伸び悩んでいる。一方で、リビングに置くテレビは買い替え時に大画面化が進み、高画質、高音質を求める声も多い。放送波だけでなくインターネット動画などの視聴機会が増えていることもあり、今年は大画面、高画質、高音質、ネット対応がトレンドになる。

 国内テレビ市場はコロナ禍の20年、21年に500万台を超えたものの、その後は市場が減少し22年以降は500万台を割り込んでいる。24年も450万~460万台前後になるとみられる。

 少子高齢化により家庭環境が変わり、テレビを複数台置かずリビングに大型テレビを1台置く家庭が増えていることや若者層のテレビ離れなどもあり、この数年、テレビの需要は大きく伸びていないのが実情だが、大画面テレビの購入比率は高くなっている。

 電子情報技術産業協会(JEITA)の出荷統計でも24年の50V型以上の台数は足元まで前年を上回って推移している。11年のアナログ放送停波時に購入したテレビの買い替えが進む中、ここ1、2年の動きを見ると、大画面化が着実に進むとともに高精細4Kテレビの購入比率が上がってきている。

 テレビ各社にとっては、買い替え時にいかに大画面で付加価値の高い機種を選択してもらえるかに着目した製品開発がポイントになってきている。主要テレビ各社では、ここ数年は大画面の高画質テレビの主力に4K有機ELテレビを置いて提案を進めてきたが、最近はミニLEDバックライト液晶を拡充する動きが活発になっている。また、AI(人工知能)を使った高画質化も進む。

 視聴環境や見たいコンテンツに合わせて有機ELかミニLED液晶かを選択できるようになってきた。さらに今年は70V型以上の大画面テレビの提案も進みそうで、大画面、高画質化の流れがいっそう過熱していくとみられる。

 高画質化と共に各社が力を入れるのは、高音質化に向けた開発だ。上位モデルの大半は映画館のような立体音響を楽しめるようスピーカーシステムを搭載しており、デジタル技術を組み合わせることで、包み込まれるような音場空間をつくり上げる。

 薄型テレビはスピーカーの取り付けに制限があるため、各社はスピーカーユニットの搭載に趣向を凝らす。最近は音場づくりでもAIが使われており、大画面の映像に負けない音づくりが今年はさらに進化しそうだ。

 画質と音質というテレビの基本機能に加え、第3の基本機能になりつつあるのがインターネット対応だ。最近は地上波などの放送だけでなくインターネット動画を視聴する人も増えているため、大半のテレビがネット動画対応機能を装備。多様なネット動画を簡単に検索して視聴できる機能だけでなく、動画コンテンツに合わせて画質を最適化する機種が主流になっている。

 現在、テレビを展開するメーカーはパナソニックやソニー、シャープ、TVS REGZAといった主要メーカーのほか、LGエレクトロニクス、ハイセンス、TCLといった海外メーカーも参入し、画質・音質を前面に出している。各社の競争はさらに激しくなってくるとみられる。

ミニLED液晶で高画質化進む

大画面・高画質

大画面化を提案する動きも活発化

 今年もテレビの大画面化と高画質化が第一の訴求ポイントになってくるだろう。これまでは高画質テレビの最上位は有機ELだったが、この一年を見ても値頃感のあるミニLED液晶テレビの製品群が充実してきており、有機ELとミニLED液晶の双方を上位モデルとして訴求する動きも出ている。

 高画質テレビの象徴になっていた有機ELは、引き締まった黒との高コントラストが強みとなっていたが、ミニLED液晶も、緻密なバックライトの制御によって黒の再現性が一気に高まってきた。ミニLEDは輝度も高いことから、視聴シーンや見たいコンテンツに合わせて機種を選ぶ人も多い。

 有機ELも液晶もパネルを調達するメーカーが大半で、現在は独自の画質のチューニングや、パネルメーカーと共同で高画質化を目指して開発を行うところも増えている。

 高画質化に向けては映像処理エンジンが肝で各社とも開発に力が入る。この数年はAIの活用も進み、コンテンツや部屋の環境に合わせて画質処理するモデルもあり、メーカー間での違いも出てきた。

 さらに、70V型以上の大画面テレビを提案する動きも活発化しそうだ。

 昨年末にTVS REGZAが85V型から110V型までの大画面4K液晶レグザを一気に発表した。大画面テレビは海外メーカーの製品が充実しており、TCLジャパンエレクトロニクスが115V型を、ハイセンスも100V型を投入。LGエレクトロニクスジャパンは4K有機ELテレビで77V型のほか、83V型、97V型まで用意する。

 今年は大画面化の流れがどこまで浸透するのか、注目される。

ドルビーアトモス対応など立体音響がキーワード

高音質

店頭でも立体音響を実演

 今年のトレンド二つめは高音質だ。テレビメーカー各社は長年、大画面の迫力ある映像に負けない音づくりに力を入れ、この数年は特に、映画館のような立体音響システムの進化が著しい。高音質化だけでなく、立体音響が今年もキーワードになるだろう。

 テレビ各社はこれまで、薄型画面のデザインを損なわずに高音質を実現するため、テレビ開発のノウハウとデジタル技術を組み合わせた音響システムの開発に取り組んできた。最近は立体音響を実現するスピーカーシステムを搭載する動きが活発で、映画館の音響技術「ドルビーアトモス」への対応も進む。

 スピーカーを天井に向けて配置し、音を天井に反射させて包み込むような音場をつくるイネーブルドスピーカーをいち早くテレビに取り入れたパナソニックは、高級オーディオブランド「テクニクス」の技術ノウハウを活用したスピーカーシステムを前面に出す。

 シャープはフラッグシップ機に、画面の上下にスピーカーを配置する「アラウンドスピーカーシステムプラス」を搭載している。画面上のハイトスピーカーを前面に20度傾斜させており、包み込まれる音場を楽しめる。

 TVS REGZAは「レグザイマーシブサウンド360プロ」で、包み込まれる本格的な立体音響を実現。チャンネルごとに最適な補正をかけ、ライブ会場や映画館にいるような臨場感を感じられる。ミリ波レーダーを使い、視聴する人の位置に合わせて音を自動で最適化する機能もある。

 各社のテレビ上位機は手軽に迫力のある高画質映像と音が楽しめるようにしており、デジタル技術の進展でより臨場感の高い音場がつくれるようになってきた。各社とも独自のアプローチで音づくりに取り組んでおり、今年も音の面からの新たな進化が期待される。

独自機能とサービスで差別化図る

ネット動画

ネット接続でさまざまなコンテンツを垣根なく探せるようになる

 今年のトレンド三つめはネット動画だ。主要テレビ各社の最新テレビは大半がインターネット動画に対応し、上位モデルでは自分の好きなコンテンツにすぐにたどり着ける機能もある。

 コンテンツと視聴環境が多様化している背景から、各社は独自の機能とサービスによって差別化を図ろうとしている。

 パナソニックは最新の4Kビエラに、アマゾンのストリーミングメディア「Fire TV」を搭載。テレビもネット動画も同じ画面で表示して好みの番組をすぐに選べるようにした。

 シャープのアクオスはグーグルTVを搭載し、ネット動画や見逃し配信などをすぐに探せる。独自アプリ「ココロビジョン」を用意し、インターネットに接続するだけで無料で使えるようにしている。

 TVS REGZAは、放送を丸ごと録画して見たい時に視聴できるタイムシフトマシンで、放送もネット動画も好きなコンテンツをすぐに見つけられる「ざんまいスマートアクセス」を訴求する。

 ソニーのブラビアはグーグルTVを搭載。ソニー・ピクチャーズの最新作から過去の名作映画まで楽しめるコンテンツサービス「ソニー・ピクチャーズ・コア」もある。

 LGエレクトロニクスジャパンは、個々人のアカウントでホーム画面を作ることができ、視聴スタイルに合わせたコンテンツを画面に表示できる。

 ネット動画を高画質化する機能も各社が搭載しているほか、リモコンにネット動画コンテンツのボタンを設けるメーカーも多い。新たなテレビの楽しみ方としてネット動画を提案する動きは今年も重要になりそうだ。