2025.01.17 2025年世界の半導体工場建設プロジェクト
25年に着工する半導体工場(地域別)
急速なデジタル化の波が押し寄せる大容量データ時代では半導体需要が急速に押し上げられている。一方で世界の地政学的緊張の高まりは半導体メーカーにとってもグローバルで確固たるサプライチェーンの構築が必要になってくる。
こうした環境の中、グローバル展開する半導体メーカーは2025年以降、工場の新設や増強により、ウエハー生産増強に取り組んでいる。半導体製造装置・材料メーカーで組織するグローバル団体SEMIによると、25年には世界で半導体18工場が建設予定および建設中という。このうち米国と日本でそれぞれ4つの建設プロジェクトが進行、中国、欧州、中東、台湾、韓国、東南アジアでも建設プロジェクトが予定されている。SEMIはまた、25年の半導体生産能力は、月産3360万枚(200ミリウエハー換算)になると予測。高性能コンピューター(HPC)におけるロジック技術の高度化と拡大する生成AI(人工知能)利用によるもの、と分析する。これまでに主な半導体各社が公表している今後の工場計画は次の通り。
世界各地で新工場建設プロジェクトが進む
中国・上海の華虹半導体は前工程のウエハーのみを生産するファウンドリー企業。12インチウエハー子会社の華虹製造が現在工場を建築中だ。華虹半導体は上海の金橋地区と張江地区で8インチウエハー3工場を操業中という。
米インテルは200億ドルを投じて米オハイオ州ニューオールバニに建設中の300ミリウエハー工場がまもなく生産開始予定。2つのチップ工場があるニューオールバニ工場群は25年の生産開始を予定していたが、最近の同社の発表によると建築工事の遅れが要因となり26年操業にずれ込みそうだという。
米マイクロン・テクノロジーでは150億ドルを投資するアイダホ州ボイシの2つの工場は、25年生産開始の予定。ボイシでの投資は、今後20年で1200億ドルを投資する計画の一環。「米国業界有数のメモリー工場誕生が夢」という同社の期待は大きい。
サムスン電子は22年に国内京畿道南部の平沢(ピョンテク)市の工場拡張計画を発表、今年6月量産開始の予定だった。しかし調査会社トレンドフォースが昨年8月、第6世代DRAM需要の減少により拡張工事が遅れていると報道、当初計画は遅れそうだ。
台湾のTSMCは米アリゾナ州に2工場を建設中。当初の120億ドルから400億ドルへ、投資額は3倍以上に膨れ上がり、第1ファブは24年、第2ファブは26年完成予定で進行中だった。しかし、第1ファブは25年中の操業開始にずれ込んでいる。両工場が稼働すればウエハー換算で年間60万枚の生産能力になるという。
NAND型フラッシュメモリーのキオクシアは岩手県北上工場における3次元フラッシュメモリー「BiCS FLASH」向けの300ミリウエハー生産をまもなく開始する。昨年11月に完成した北上工場第2製造棟(K2)での操業開始は今年9月の予定。
ラピダスは現在、北海道千歳市に2ナノプロセス技術の製造拠点「IIM-1」を建設中だ。国内初の2ナノプロセス技術導入となるだけに注目度は高い。今年4月には試作ラインの稼働開始を予定しており、量産ラインは27年に立ち上がる計画だ。
先進ノードが拡大をリード
SEMIのレポートによると、チップ業界は大規模言語モデル(LLM)の計算需要の高まりに対応するため、先進的な計算能力を構築する取り組みを強化している。チップメーカーは、先端ノード(7ナノ以下)の能力を積極的に拡大しており、25年には月産30万枚以上増加し、合計月産220万枚となる見込みで、年間成長率は業界をリードする16%に達する。
中国のチップ自給戦略と、自動車やIoTアプリケーションからの需要が見込まれることから、主流ノード(8~45ナノ)の生産能力はさらに6%増加し、25年には月産1500万枚のマイルストーンを超えると予測されている。成熟技術ノード(50ナノ以上)は、市場の回復の遅れと稼働率の低さを反映して、より保守的な拡大を見せている。23年から25年にかけて、このセグメントは5%成長し、25年には月産1400万枚に達する見込みだ。
ファウンドリーは、前年比10.9%増の生産能力を見込んでおり、24年の月産1130万枚から25年には月産1260万枚へと記録的な伸びを見せる。
メモリー分野全体では、24年に3.5%、25年に2.9%と緩やかな成長で、生産能力の拡大も緩やか。しかし、生成AI需要の高まりがメモリー市場に大きな変化をもたらしている。高帯域幅メモリー(HBM)が急成長を遂げ、DRAMとNANDフラッシュの間で生産能力の成長トレンドに乖離が生じている。
世界各地で主要半導体メーカー、ファウンドリーの工場建設が進む25年。工場建設の進捗(しんちょく)に合わせ、半導体製造装置の発注も進むと見込まれる。生成AIの普及やデジタル社会の進展を背景に拡大する半導体市場に向けて、半導体製造装置需要の拡大に期待したい。