2025.03.26 【関西エレクトロニクス産業特集】大阪・関西万博に寄せて 近畿総合通信局 藤田清太郎局長

次世代通信技術などでICT社会実装の具体策示す

 「万博」は、地球規模のさまざまな課題に取り組むため世界各地から英知が集結する場であると同時に、世界中から参加する人々がさまざまな技術やアイデアを交換し、課題解決に向けた共創の場でもある。

 ICT分野においても、次世代の高度通信技術の開発や社会実装の具体的な形を示すことで、「未来社会の実験場」という万博の理念に貢献することが期待されている。

 総務省では、5月26日~6月3日にEXPOメッセ「WASSE」において、「Beyond5G ready ショーケース」として、次世代通信技術であるBeyond 5Gが実現した未来の社会・生活のイメージについて、リアリティーや没入感を重視した体験機会を提供する大規模な展示を実施する。

 また、当省所管の国立研究開発法人である情報通信研究機構(NICT)は、「ICTスタートアップが魅せるちょっと先の未来」を体感いただくため、9月16日から22日まで「FutureLife Experience」において、地域発ICTスタートアップによる展示や近畿地区の高校生によるピッチコンテストなどを実施する。

 さらに、万博会場では、30言語に対応した高度な自動翻訳システムを活用し、世界中から来場する方々が言葉の壁を越えてグローバルな交流を体験できる環境が提供される。スマートフォンなど手持ちの端末にアプリをインストールし、来場者が無料で使用できる。

 この自動翻訳アプリには、NICTが長年にわたり開発を進めてきた、高い翻訳精度を誇る国産エンジンが実装されている。「言葉の壁」を越えるチャレンジとして、AI(人工知能)を活用した多言語翻訳技術の実装の姿をお見せできることを期待している。

 万博の機運醸成のため、現在、近畿総合通信局では、以上の当省の行う展示などについて発信するほか、万博を契機とした地域の活性化などの議論やデジタル空間を活用した取組である「バーチャル万博」の紹介などを行っている。6月に開催予定の「電波の日・情報通信月間」記念式典では、開催中の万博の後半の魅力を発信するため、博覧会協会による講演を予定している。

 また、万博が円滑に開催されるよう、周波数利用や電波監視にかかるさまざまな取り組みを行っている。

 近畿総合通信局では、パビリオン内でアンドロイドのシームレスな動作を支えるローカル5G、宇宙太陽発電所を模したジオラマやEVバス走行中のワイヤレス給電、空飛ぶクルマが使用する航空無線のほか、連絡用デジタル簡易無線や催事用のラジオマイクなどに免許などを順次交付するほか、今後増加が見込まれる海外からの持ち込みを含む各種無線システムへの迅速な無線局免許や検査に対応する体制を整えている。特に、ラジオマイクについてはパビリオンや催事場で多数利用されるため、関係機関と周波数調整を行い、必要とされる周波数を確保している。

 また、携帯電話事業者各社におかれては、会場内における携帯電話の輻輳(ふくそう)に対応するため、インフラシェアリング事業者と共同して5Gを含む基地局を屋内外に多数設置するほか、会場への鉄道アクセスルートなどについても、重点的に基地局が整備され、開会までに5G携帯ネットワークの整備が完了する見込みとなっているところ。

 電波監視の取り組みも欠かせない。警察や消防など人命・財産保護のための重要な無線通信および放送のほか、国内外から来訪する要人警護に係る無線通信への干渉・妨害に対して、迅速に排除する必要がある。

 近畿総合通信局では、開催期間中、特別電波監視体制を構築するとともに、博覧会協会や関係機関と連携しながら要員を適切に配置して一層の監視強化を図り、万博会場やその周辺における良好な電波利用環境の維持に努めていく。