2025.04.15 「海外勤務に年々関心」半導体業界 若手の本音 アナログ・デバイセズ㊦

インタビュー中の4人。左から馬目さん、桑原さん、志茂さん、長谷川さん

 成長分野として注目を集めている半導体業界で働く若い世代の声を届ける企画。今回取り上げるのはアナログ半導体を手掛ける米アナログ・デバイセズ(ADI)の日本法人で働く若手社員だ。顧客の技術サポートを行うフィールド・アプリケーション・エンジニア(FAE)4人に話を聞いた。彼らが思う半導体業界の課題と、キャリアプランとは。

【ご協力いただいた若手社員の皆さん(五十音順)】
桑原進志(くわばら・しんし)さん 4年目。航空宇宙・通信分野のFAE。
志茂亨輔(しも・きょうすけ)さん 3年目。産業機器向け電源製品のFAE。
長谷川諒汰(はせがわ・りょうた)さん 3年目。ヘルスケア分野のFAE。 
馬目華奈(まのめ・かな)さん 4年目。ロボット・AI(人工知能)分野のFAE。

―若手の皆さんから見て、現在の半導体業界はどのような課題があると思いますか。

桑原さん ADIの扱う半導体はコモディティ化が進んでおり、競合他社との差別化が課題になっていると思います。付加価値の高いチップ開発が求められており、日本拠点からも顧客の声を本社にフィードバックしていく必要があります。そのため、技術サポートへの要求は年々高まっており、人材不足にもつながっていると感じます。

長谷川さん 私も同様の課題を感じています。その中でコスト競争を戦っていくのではなく、より技術的な面で顧客にとってのメリットを訴求することがFAEとして重要になっていると感じます。

―そのような仕事を続ける中で、皆さんは自分のキャリアプランをどのように考えていますか。

馬目さん 私の今の最大のモチベーションはエッジAIを社会に実装することで、今はとにかくそこに注力したいという思いが強いです。ADIはしっかりとした技術を持っている会社なので、その中で正しいことをしていれば自然とスキルは身につくと思います。だから、今の業務を続けることで、今後キャリアパスも描けるのではないかと考えています。

「今の最大のモチベーションはエッジAIを社会に実装すること」と語る馬目さん

桑原さん 私にはまだ「これができる」という武器がないように思うので、自分の領域の知識を深めたいです。特に一つのチップに複数の機能を持たせるSoC(システム・オン・チップ)によってアナログだけでなくデジタルの技術にも通じている必要が出てきています。

 同時に、私が所属するグループは通信だけでなく航空宇宙・防衛分野もカバーしており、市場の変化もあるので、幅広い知識も身につけていきたいです。

―海外勤務についての意識はどうでしょうか

志茂さん 身近に海外勤務を選ぶ社員が多いわけではありませんが、私自身は年々関心が高まっています。定期的に海外でトレーニングを受ける機会があり、その中でコネクションもできてきているためです。

長谷川さん 私は入社当初からマネージャーに海外勤務したいという希望を伝えています。「自分が海外に行くための理由」が必要で、今はその実績を作りたいと思っています。

入社当初から海外勤務を希望しているという長谷川さん

―最後に、これから半導体業界を目指す人にメッセージをお願いします。

長谷川さん 半導体もそれを使うアプリケーションも学べるので、技術的好奇心がある人なら一生飽きない仕事だと思います。

馬目さん 半導体業界は市場が大きくなると思うので、ビジネスチャンスが広がっています。そこで重要になるのは「信頼」。すぐに築けるものではなく、日々の仕事の中で徐々に信頼を得るのが大切です。

志茂さん さまざまな業界のプロとやり取りして、最先端の技術とプロの知見を得ることができる仕事です。幅広く色々な人と関わる面白さがあります。

桑原さん FAEは顧客の顔を見て仕事をするので、感謝されることも多く、やりがいが実感できるはずです。

(おわり)

【アナログ・デバイセズについて】
 高精度な信号処理やアナログ・デジタル変換技術で業界をリードする大手半導体企業。車載や産業機器、民生、医療、通信など幅広いマーケットに向け精密なアナログICを提供している。今年で創立60周年。日本拠点では製品の営業・技術サポートを行う。同社で開設した外国拠点は日本が初で、重要な役割を担っている。

〈執筆・構成=半導体ナビ