2025.07.08 【家電総合特集】後半戦の取り組み アキュフェーズ 鈴木雅臣社長

鈴木 社長

国内販売に力を入れる

ハイエンド・オーディオ、体験で製品アピール

 2025年前半の販売状況は、国内外で大きく異なる結果になった。

 海外販売は24年11月に発売した「純A級インテグレーテッド・アンプE-800S」が起爆剤となり、インテグレーテッド・アンプやSACDプレーヤーを中心に好調に推移した。

 半面、国内販売はインテグレーテッド・アンプやSACDプレーヤーが売れる構図は海外と同じだが、全体の販売数量は伸びず不調に終わった。

 今年前半に新製品を3機種投入した。4月には「インテグレーテッド・アンプE-3000」を発売した。E-3000は、当社インテグレーテッド・アンプの中で最も安価な製品E-280とその上の価格帯のE-380を統合したエントリー・モデルになる。

 価格を抑えた製品だが、上級機の技術を漏れなく投入したことで多彩な機能を搭載するとともに、クラスを超えた音楽の表現力を実現している。

 当社独自技術のボリューム・コントロール回路「AAVA」に雑音とひずみを打ち消す独自技術「ANCC」を搭載し、雑音を20%低減した。パワーアンプ最終段の出力素子を3並列プッシュプルにしたことで100W/8Ω負荷の出力を確保し、ダンピング・ファクターを600まで高めている。

 E-3000は国内外とも大変好調で、生産が追い付かず数カ月先の生産分にまで受注が入っている。

 5月には「フォノ・イコライザー・アンプC-57」を発売した。C-57は20年に発売したC-47の後継モデルになる。MCカートリッジ用のヘッド・アンプに「ANCC」を搭載して究極の雑音性能を実現している。入力から出力までフル・バランス増幅構成とし、究極のフォノ・イコライザーアンプを目指して開発した。

 6月には「FMステレオ・チューナーT-1300」を発売した。18年に発売したT-1200の後継モデルになり、受信した電波を増幅・選択するフロント・エンド部分以降は、デジタル信号処理によって機能を実現している。これによりT-1200から実用感度と雑音特性を大きく向上させた。

 1990年代以降、CDなどのデジタルメディアの普及によりFMチューナーに必要な多くの部品の入手が困難になったが、当社はHi-Fi FM受信の文化を絶やさないため、独自の高周波技術とデジタル信号処理技術で入手困難な部品を代替することでFMチューナーを製品化し続けている。

 今年後半に向けては、前半で苦戦した国内販売に力を入れる。ハイエンド・オーディオの販売が振るわない原因の一つに、販売店に足を運んでくれるお客さまが少なくなっていることが挙げられる。

 ハイエンド・オーディオ機器は、カタログの内容と価格だけでお客さまが購入を判断するものではない。試聴会やオーディオショーなど、各地で行われるイベントに積極的に参加して、お客さまに実際に製品を見て、触れて、聴いていただくことで製品をアピールしていく。