2025.07.17 プリファードの材料探索シミュレーター 米国に本格進出

最新バージョンのマトランティスの性能やクライアント数

 AI(人工知能)関連の開発を手掛けるプリファード・ネットワークス(PFN、東京都千代田区)の子会社で材料探索用のシミュレーターを手掛けるMatlantis(マトランティス、同区)が、米国拠点を開設した。製品の大幅なアップデートにより、同じ所要時間で従来の2倍の精度で計算できるようにもなった。AIを使った新材料の研究開発の普及が期待される。

 今回、米国マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を開設。同社はパナソニックやトヨタバッテリー、レゾナックなどを顧客とするが、韓国の現代自動車などにも導入し、海外展開にも積極的だ。

 材料探索は、新しい素材を設計するための計算化学的方法の一種。PFNは石油元売り大手のENEOSと共同出資で子会社を設立し、社名と同じ汎用原子レベルのシミュレーター「マトランティス」を展開している。

マトランティスの特徴は、機械学習を活用すること。従来の方法は「DFT(密度汎関数理論)計算」と呼ばれるもので、計算コストの高さが課題だった。そこでマトランティスでは、機械学習によりDFT計算の結果を教師データとして学習し、それに基づきAIモデルを構築する。

 今回のアップデートで計算手法を刷新。他社でも使われる「PBE汎関数」という手法から、世界で初めて「r2SCAN汎関数」という手法に変えた。計算精度が2倍まで向上する。新たに採用した手法は計算時間が3~5倍かかるが、マトランティスは学習データセットを用意することで、従来通りの所要時間で済む。

 同社は元々、「プリファード・コンピュテーショナル・ケミストリ―」という社名だったが、1日付で製品名と統一している。