2025.08.21 【AI時代の検索㊥】 葬儀・墓石業界の集客にも変化の波 ウェブ対策を支援する企業が存在感
ディライトでAIOコンサルタントを務める高橋氏 「SEOは技術的な面が強いが、AIOは誠実にやることが大切になる」と話した
企業がAI(人工知能)に認識されるよう自社のウェブサイトやコンテンツを最適化する「AIO(AI最適化)対策」に、多様な業種のウェブ担当者が注目している。一つが、遺族が故人を悼むための機会や場を提供する葬儀・墓石業界だ。同業界の集客支援で存在感を高めるディライト(東京都新宿区)に迫った。
◇ ◇
2007年設立の同社は同業界に特化した人材派遣会社としてスタートし、事業領域を拡大。AIO対策にも力を入れている。AIOコンサルタントを務める高橋丈太郎氏は、葬儀会社などの関係事業者が「AIに選ばれる対策」を打つ必要性を説く。
同社が生成AIで引用される情報源を3月に調べたところ、興味深い傾向が浮き彫りになった。米オープンAIが開発した対話型AIの最新モデル「Chat(チャット)GPT-4o」が、最も多く引用していたのは「ポータルサイト」だったのだ。
ポータルサイトが情報源
例えば、東京23区で「おすすめの霊園」を尋ねる質問をチャットGPTに入力。その際に引用する情報源を確かめたところ、ポータルサイトが引用総数268回のうち約9割を占めた。同様の方法で永代供養墓の質問を投げかけた場合も圧倒的にポータルサイトが多く、約95%に達した。
情報源がポータルサイトに偏る理由は何か。取材を進めると、全国の霊園情報や利用者の生の声である「口コミ・レビュー」が集積されていることが要因と分かった。AIは調べた情報をまとめて回答する際、信頼性や説得力を高める利用者の体験談も重視する傾向にあるという。
高橋氏は調査結果に触れ、「ポータルサイトはその会社のサービスを利用した第三者の『体験』の1次情報という扱いになる」と説明。自社サイトを持つ企業に対し、AIの目に留まるようサイト内の「1次情報の質」を充実させる対応を求めた。
鍵を握る3つの対策
重視するウェブ対策の1つが「内部対策」だ。タイトルを最適化し文章構成やキーワードの配置を工夫するなど、AIエンジンに「分かりやすい」と評価してもらえるようサイト内を整理整頓する。
2つ目が「外部対策」だ。「プレスリリースやSNSでの情報拡散」や「Google ビジネスプロフィールの強化」といった対策で、対外的な信頼を高めていく。
3つ目は「コンテンツSEO(検索エンジン最適化)」と呼ぶ対策で、霊園や墓に関する具体的な疑問を先回りして解決するコラムやFAQ(よくある質問)を用意し、独自の強みを深掘りする。
これらの対策に注力することで、AIから引用される可能性が高められる。高橋氏は「AIOはAIの検索結果に表示させることがゴールではない。検索を問い合わせにつなげることがゴールだ」と語る。
「待ったなし」の変革
さらに高橋氏は、チャットGPTを業務で利用してきた自身の経験に触れながら、「AIOに先を見越して取り組み、チャンスを確実につかむことが大切だ」とも述べた。
消費者の情報収集行動は多様化し、検索エンジンやSNS(交流サイト)上でサイトをクリックさせる従来の方法だけで誘引することが難しくなりつつある。こうした変革期への対応で後れを取ると、自社の優位性や魅力を市場に届けられないまま商機を逃しかねない。
「AI時代の検索競争」を生き抜く戦略を築く課題は、ニッチな業界にとどまらず、消費者と向き合う全ての業界に突きつけられている。
(つづく)