2025.08.22 【AI時代の検索㊦】 マーケティング戦略の進化の行方はいかに キーパーソン2人に迫る
取材に応じるHakuhodo DY ONEメディアソリューション本部の砂田和宏本部長(右)とSXOソリューション局の登章良局長=東京都港区
AI(人工知能)の台頭をきっかけに社会に根付いたインターネット検索文化に「地殻変動」が起きる中、幅広い業種で新たなウェブ戦略を模索する機運が高まり始めた。企業はこうした変革期にどのように向き合うべきか。博報堂DYホールディングス子会社でデジタルマーケティング事業を手がける「Hakuhodo DY ONE」(東京都港区)のキーパーソン2人を取材し、AI時代を生き抜く企業に求められる戦略を探った。
◇ ◇
AI時代に突入し目に触れる機会が一気に増えてきた「AIO(AI最適化)」。AIでマーケティング戦略を最適化する戦略を表すAIOは、検索結果の要約を生成AIが表示する米グーグルの新機能「AIオーバービュー」の略称としても注目を集めている。いずれのAIOも、企業のマーケティング担当者にとって無視できない動きだ。
年々増える利用者数
Hakuhodo DY ONE オウンドソリューション本部SXOソリューション局の登章良局長は、検索機能を提供するプラットフォームの選択肢が広がる現状を概観し、「AIを活用した検索エンジンの利用者数が年々増加している」と指摘。その上で、「『AIを使った検索エンジンでどのように上位に表示させるか』というマーケティング需要が高まっていくだろう」と予測した。企業には、緻密なマーケティング戦略が試されるというわけだ。
米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」に代表される対話型AIが台頭すると、ウェブサイトを巡回して情報を集める「検索エンジン」と、検索結果を表示する際のルールを表す「アルゴリズム」も大きく変わる。
登氏はこうした変化を踏まえ、検索エンジンの仕組みやプロセスを理解する必要性を強調。加えて、グーグルやマイクロソフトなどの検索エンジンで認識できた情報が「AIクローラー(ウェブサイトの情報を収集するプログラム)」で認識できない仕様のサイトが存在する可能性について言及した上で、「『AIフレンドリー』にするためのテクニカルな施策の重要性が高まる」とも述べた。
一方、同社メディアソリューション本部の砂田和宏本部長は、広告の掲出先の媒体を持つ媒体社にAI検索がもたらす影響について分析。「人間がアクセスするトラフィック(通信量)が減り、収益が低下してきている」とした上で、「媒体社もAIO対策について考える必要性が出てきた」と強調した。
メディア変革も急務
媒体社がコンテンツによって収益を得るハードルは高い。AIが回答した情報だけで検索ユーザーが満足してしまうリスクも無視できず、 媒体社には難しいかじ取りを迫られそうだ。
とはいえ、AI経由の検索ユーザーが着実に増えているだけに、業界を問わずAIO対策は避けて通れない。登氏は「検索エンジンの利用状況を解析すると、AIアプリケーション内のブラウザーからのアクセスが増えている」と解説する。砂田氏も「企業は自社の情報に触れてほしいという立場にあり、メディアへの露出量と必要なコストが見合う場合はAIO対策に取り組んだ方が良い」と対策の必要性を説く。
ユーザー流入に変化
登氏は「AIを活用した検索エンジンのユーザーを自社サイトに誘導するとともに、AI検索エンジン経由でのトラフィックを最大化させる対応が企業に求められる」と力説。続けて、「AIによる回答を基に自社ブランドの評判を把握し、ブランド力の向上につなげる取り組みも重要だ」と話した。
砂田氏は、AIというインターフェースの背後にある媒体の発信力をユーザーが感じ始める可能性が高いと予測。「メディア企業には、自社の存在価値を深掘りしてAIインターフェースに適応する対応が求められる。悩ましい問題ではなく、取り組み方について真剣に議論する必要がある」と課題を投げかける。
AI対策の優劣が、メディアに限らず幅広い業種の企業の生き残りを左右することになりそうだ。
(おわり)