2025.10.06 三菱電機、鉄道向け駆動システムが「R&D 100 Awards」受賞 省資源で車両省エネ化
「R&D100Awards」を受賞したシントラックス
三菱電機が開発した世界初の鉄道車両向け同期リラクタンスモーターシステム「SynTRACS(シントラックス)」が、革新的な技術開発に贈られる「R&D100Awards」(主催=米・R&Dワールド)を受賞した。車両の省エネルギー化を省資源化した同システムで実現するという技術力に加えて、2024年度に量産化した実績も評価された。
R&D100Awardsは1963年から毎年、前年に実用化された製品の中から世界の優れた技術100件を選定する表彰制度で、「技術革新のアカデミー賞」として知られる。大学関係者や研究者などの専門家が技術的な重要性、独自性、有用性の観点から評価する。同社は、今回を含め28件受賞している。
車両制御システム部パワエレシステム開発課の寺本晃大チームリーダーは「実社会への応用までもっていけたという成果を含めて評価され、受賞に至った」と話す。
シントラックスは、同期リラクタンスモーター(SynRM)とインバーターで構成。中でもSynRMは、回転子に磁石を使わず、必要なエネルギーを電流のみで賄うため、高効率なことが特徴だ。さらに、レアアース(希土類)も使用しないため、省資源化に貢献できる。
一方、高出力化と広い速度域での高いトルク特性の実現が難しく、鉄道車両向けの実用化が進んでいなかった。
同社は、16年度から先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市)で開発を始めた。開発には、最新の電磁界解析技術や強度解析技術を活用。最適な構造により、トルクの最大化を実現した。また、低い損失でモーターを駆動できるSiC適用インバーターと協調することで、大電流であっても損失を抑えることに成功した。
21年3月に東京メトロの車両に搭載し、試運転を開始。その後、21年12月から22年12月にかけて人が乗った状態で実証実験を行った。その結果、高効率誘導モーターシステムに比べ約20%の消費電力削減を確認した。
24年11月には、初めてシントラックスの量産品を搭載した福岡市交通局の車両が運転を開始した。
既に同社伊丹製作所(同県尼崎市)で量産化しており、東武鉄道や阪神電車の在来線車両にも導入されている。電機システム技術部モーター基盤技術グループの枦山盛幸氏は「省エネ性能(が高いこと)やレアアースを使わない点が顧客に刺さってくる」と強調。受賞をきっかけに、認知度の向上とさらなる拡販を狙う。