2025.10.26 NTTデータと東京海上日動、新会社を通じて働く世代の介護支援を加速

ワーキングケアラー支援事業で連携するNTTデータの鈴木正範社長(左)と、NTTデータ ライフデザインの濱口社長(中央)、東京海上日動火災保険の城田宏明社長(右)=東京都千代田区

 NTTデータと東京海上日動火災保険は、働きながら家族の介護を担う「ワーキングケアラー」を支援する事業を始めたと発表した。NTTデータの技術力に東京海上日動の顧客基盤や専門ノウハウを融合し、企業や従業員が抱える「仕事と介護の両立」という課題の解決を後押しする。

 10月に立ち上げた新事業は「ケアラケア」。仕事と介護の両立を支えるサービスを、NTTデータが東京海上日動と共同で出資する新会社「NTTデータ ライフデザイン」を通じて提供する。まずはNTTグループが企業向けサービスを順次導入。その実績を土台に26年度以降には、導入対象を全国の大手・中堅企業へと広げる計画だ。

 企業向けサービスでは、親の介護が必要な従業員の実態を把握。その調査結果に基づいて従業員のタイプや潜在的な課題を整理し、「介護実態診断レポート」を作成。戦略的に介護による離職を防止したり、労働生産性を維持したりできるようにする。介護ストレスが高い従業員に対しては、専門家がヒアリングを通じて悩みを解決し介護プランを指南する「パーソナルカウンセリング」を行う。

 個人向けでは、親を施設に預けているような安心感が得られるサービスを用意。介護専門家「コンシェルジュ」がワーキングケアラーに寄り添って助言や提案を行うほか、親の見守りや家事代行をはじめとする生活支援サービスも提供する。

 さらに、こうした展開で得られた膨大なデータに人工知能(AI)を組み合わることで、一人一人に最適化したサービスを実現し、品質を継続的に高めていく。全国の介護関連サービス事業者とも連携し、サービスの種類や提供エリアを拡大する予定だ。

 東京都内で24日に開かれた説明会で、NTTデータ ライフデザインの濱口雅史社長は「民間の活力をしっかりと介護の領域に入れていきたい」と強調した。2030年度までに導入企業で500社、個人利用者で30万人を獲得し、売上高100億円の達成を目指す。

介護離職は企業活動に影響

 高齢化が進む中で仕事と介護の両立は、企業共通の経営課題となっている。両立が困難になると従業員のパフォーマンスが低下し、場合によっては離職せざるを得ない状況となり、企業活動にも影響が及ぶ。経済産業省の試算によると、30年にはワーキングケアラーが約318万人に到達し、経済損失は約9.2兆円に達する見通しだ。

 こうした中で4月から、改正育児・介護休業法が段階的に施行。企業に対して、仕事と介護の両立を支援するための体制整備が義務付けられた。東京海上日動の城田宏明社長は「ケアラケアと保険を通じて得られたデータや知見を活用し、従業員が安心てして働き続けられる環境づくりや高齢者のウェルビーイング(心身の健康と幸福)向上に貢献していきたい」と述べた。